シンデレラ思考 VS 盆栽思考

「たったひとりの運命の相手」という物語は、古代神話からハリウッド映画まで語り継がれてきました。
しかし現実には、アイコンがオンラインになるたび胸がざわめき、既読確認がやめられない――そんなストレス行動を引き起こします。
脳画像研究では、恋愛の高揚感がコカインと同じ報酬回路を刺激し、失恋は“恋愛の禁断症状”に似た反応を招くことが報告されています。
さらにSNSのおかげで、元恋人の発信や行動を手軽に追える時代となり、約7割の参加者が別れ後に何らかの別れ後の連絡・追跡行動を経験していることが分かりました。
ここで鍵を握るのが「恋愛観モデル」です。
理想の相手を見つければ自然にうまくいくと考える運命型と、関係は努力で育つと考える成長型の2種類があり、前者はいわば“シンデレラ思考”、後者は“盆栽思考”と対比できます。
最近の研究では、相手をソウルメイトと感じるほど運命型の影響が強化され、別れが“破ってはならない契約の崩壊”と受け止められる危険が指摘されています。
一方、数分の動画や記事といった軽い介入でも恋愛観を揺さぶり、別れ後の衝動を和らげる報告が出始めています。
研究チームは「恋愛観とソウルメイト感が別れ後の連絡・追跡行動をどう後押しし、介入で衝動を抑えられるか」を4つの調査・実験で検証しました。
まず142人に別れ直後の行動を回想してもらったところ、運命信念が強いほど電話・SNS確認・偶然を装った接近などを平均5件以上行っていました。
次に198人に対象を広げ、相手をソウルメイトと感じた度合いを尋ねると、その思いが強い人では運命信念と別れ後の連絡・追跡行動の相関がr=0.57と中程度まで跳ね上がりました。
3つ目の実験では架空の雑誌記事を用いて恋愛観を操作したところ、運命派の記事を読んだ群は成長派の記事群より約30%高い割合で「別れたら追跡行動を取りそう」と自己申告しました。
最後の学生サンプル実験でも、短い記事で運命信念をわずかに揺さぶるだけで追跡意図が低下する兆しが確認されました。
つまり「この人しかいない」という思い込みは別れ後の連絡・監視行動を強く後押しし、ライトな心理アプローチでも衝動を和らげられる可能性が示されたのです。