時間と空間の境界で突然発生する閃光を確認

研究チームはまず、長さの異なる2本の光ファイバー環を使い、光が飛び移る経路をあらかじめ細かく配置することで、空間と時間の両方向にわたる“時空結晶”を人工的に作り出しました。
こうしてできあがったシステムの中には、空間と時間の境界がまさに交差する一点が生まれます。
そして完成した時空結晶に光のパルスを照射しました。
すると、空間と時間の境界がぶつかる“一点”にあたる特定の時刻と位置で、きわめて局所的な強い閃光が観測されました。
しかも、ほかのタイミングや場所では光は全く見当たらず、研究者たちが表現するように本当に“何もない”ところから突然光が生まれ、すぐにかき消えるような様子が確認されたのです。
一見、「実際には光ファイバーに外部から光を入れているのに、どうして“無から光が生まれる”なんて言えるの?」と疑問に思われるかもしれません。
大きな視点で見れば、当然ながら光パルスは外部から注入され、特殊な構成の光ファイバーや増幅器などが系を支えています。
決して文字どおり「何のエネルギー源もない空間に突然光が湧く」わけではありません。
ただ、系の内部に用意された“空間と時間の境界”が交わる地点を見ると「前の時刻・隣の場所に光が全然なかったのに、そこだけでパッと光が立ち上がる」というふうに観測されるのです。
(※閃光が現れる直前・直後では、同じモードが虚数運動量ゆえに時間方向にも空間方向にも急速に減衰し、測定器には「ほぼゼロ」として映ります)
前後に何も検出できなかったのに、時空の結節点だけで閃光が走るというのは素直に驚きです。
しかもこの閃光は「因果律」による特殊な保護効果も観測されました。
閃光の発生する時空点に対して、時間的に過去側からは光を送り込んでその状態を励起できますが、未来側からいくら刺激してもその状態を起こすことはできません。
いわば時間の矢に沿った方向にのみ反応し、逆方向からの影響は受け付けないのです。
このような因果性による一方通行の振る舞いも、従来の空間トポロジーにはないユニークな効果として確認されています。