なぜ「同じ腕」にワクチン接種すると良いのか?
この研究では、健康な大人30人を対象に、COVID-19ワクチン(ファイザー製ワクチン)を3週間間隔で2回接種し、免疫の働きにどんな違いが出るかを調べました。
20人は1回目と2回目を同じ腕に、10人は反対の腕に接種しました。
その結果、同じ腕に打った人は、2回目の接種から5~7日後に、より多くの抗体(特に広い型に対応できるもの)を素早く産生していたことが分かりました。
一方、反対の腕に打った人では、抗体の立ち上がりが遅く、初期の防御反応が弱かったのです。
ただし、時間の経過とともに(2回目の摂取から4週間後には)両グループの抗体レベルはおおよそ近い水準に落ち着いたとされています。

また、今回の研究ではマウスを使った実験でも、同様の結果が得られました。
マウスの体の同じ側にワクチンを投与すると、リンパ節の監視役である免疫細胞「マクロファージ」で、既に反応する準備が整っていたのです。
これは「リンパ節による記憶」を意味します。
ワクチンを打つと、近くのリンパ節がその情報を学習・記憶するため、同じ病原体が来たときにすばやく反応できたのです。
では結局、ワクチン接種はどちらの腕で受けるのがいいのでしょうか?
今回の研究結果だけを考えると、「初回と同じ腕で受けることが、初期の免疫反応をより強く引き出す」と言えます。
ただし、最終的な抗体の量はどちらの腕でも似たような水準に達するため、重大な違いではありません。
研究チームも、「もし、異なる腕でワクチン接種を受けたとしても、心配しないでください。時間の経過と共に防御効果の差は小さくなります」と述べています。
そして、この研究は小規模に行われたものであり限界があります。
より大きな集団に対する検証が今後の課題と言えるでしょう。
研究チームも「これはワクチン戦略の一つの知見であり、今後の設計や記録方法に活かせる情報です」と慎重に語っています。