Credit:ナゾロジー編集部,OpenAI
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「間違いを認めない心理」を終末予言を外したカルト教団に潜入して暴いた心理学者 (2/3)

2025.05.17 12:00:30 Saturday

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心理トラップ──認知協和努力正当

そして、いよいよ迎えた1954年12月21日

彼らはマーティンの家の庭で祈りを捧げ、迎えのUFOを待っていましたが、当然ながら世界ず、彼らを迎えに来るUFO現れせんした。

常識に考えると、こうした状況に対して信者たち失望団体離れるように思えますが結果は全くの逆でした

信者たちは「我々の祈りが神に届き、世界が救われたのだ」と解釈を変え、むしろ以前より積極的に布教活動を始めたのです

ただ、これはフェスティンガーの予想通りの結果でした。

では、なぜ世界の破滅が来るという予言がハズレたのに、信者たちの信仰心は逆に高くなったのでしょうか?

The Seekersの信者の多くは強い決意って入信しており、教団に参加するに当たって仕事財産手放していました。こうした状況で、教団の予言が外れるという現実に直面した場合、信者たちは自分信念現実との間に生じた矛盾に、強い精神快感(不協和)感じます

この快感減らすためは、自らの誤りを認め信念放棄するか、現実解釈するしかありません。

そして、The Seekersの信者たちは、これ解消するため事実都合よく解釈し、心理安定です。

当時、フェスティンガーはこの理論にまだ名前を付けていませんでしたが、後にこれは認知的不協和理論Cognitive Dissonance Theory)と名付けられることになります。

この認知的不協和によって起きる現象は、その後、別心理学実験でも詳しく示されています

1959年、エリオット・アロンソンジャソン・ルズ努力正当という実験いました。

彼ら女子大学生対象に、性的な問題について話し合う架空ディスカッショングループ参加するため試験として、一部女性(実験群)恥ずかしい官能小説朗読させるというかなり恥ずかしい課題し、女性(対照群)性的な意味を含む単語読み上げるだけ軽い課題しました。

その後、全員動物行動について録音非常に退屈議論した。(これはわざとつまらない無意味な講義を聞かせています)

そして、その後にこの議論に参加した感想を参加者たちから集めました。

すると単語を読み上げただけの女性たちは、つまらなかった、退屈だった、参加しなければよかった、という感想が出たのに対し、なんと恥ずかしい試験を受けた女性たちは「有意義だった」「この議論に価値があった評価たのです。

これは参加に苦労や覚悟が伴うと、参加したことが失敗だったと感じる状況でも、人はその事実を無意識に認めず、その不協和を解消するために現実を歪んで解釈してしまうことを示しています。

これはビジネスにおいて会社の上層部が誤った経営判断を訂正できずに突き進んでしまったり、恋愛において恋人が問題のある人間だとわかっても離れられなかったり、投資やギャンブルにおいて引き際を見極められないなどの問題にも通じていると考えられます。

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