運動習慣があっても、座る時間が長いと効果なし
研究チームは今回、50歳以上の成人男女404名にウェアラブル端末を装着してもらい、1日24時間の活動を7日間にわたって記録しました。
さらにその後7年にわたりMRIスキャンと認知機能テストを定期的に行い、脳の状態と記憶・言語能力の変化を精密に追跡しました。
その結果、1日に13時間前後を座って過ごしていた人々は、脳の特定領域がより早く萎縮し、認知機能も低下していたことが判明したのです。
とくにダメージが確認されたのは、記憶に関わる海馬や、言語処理を担う領域です。

重要なのは、調査対象者の約87%が、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が推奨する「週150分の中強度運動」を達成していたという点です。
つまり、運動をしていても、座っている時間が長い人は脳の老化が進んでいたのです。
また、座位行動と脳萎縮の関連性は、遺伝的にアルツハイマー病のリスクが高い「APOE-ε4」アレルを持つ人々で特に強く見られました。
これにより、「運動習慣があれば、座っていても問題ない」という従来の楽観的な考えは見直されつつあります。
「アルツハイマー病のリスクを下げるには、1日1回運動するだけでは不十分です。日中にどれだけ座っているかを意識することが、脳の健康維持には欠かせません」と、研究主任のマリッサ・ゴグニアット(Marissa Gogniat)博士は警告します。