量子世界では鏡の中心で本物と鏡像が溶け合う観測不能ゾーンが発生する
量子世界では鏡の中心で本物と鏡像が溶け合う観測不能ゾーンが発生する / Credit:clip studio . 川勝康弘
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量子世界では鏡の中心で本物と鏡像が溶け合う観測不能ゾーンが発生する (3/3)

2025.05.26 21:00:01 Monday

前ページ鏡の中心で量子ノイズが蒸発した──“測れない”から“揺れない”へ

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情報と擾乱──量子取引の新レート

情報と擾乱──量子取引の新レート
情報と擾乱──量子取引の新レート / Credit:clip studio . 川勝康弘

今回の研究は、「どれだけ物体に関する情報を引き出せるか」という測定の情報量と、「それによってどれだけ物体を撹乱してしまうか」という擾乱の大きさが密接に結び付いていることを改めて示しました。

この関係自体は不確定性原理の基本にほかなりませんが、特に注目すべきは「の散乱を最大化したときにバックアクションが消える」という直感に反する振る舞いが具体的に示された点です。

研究指導者であるジェームズ・ベイトマン博士は「本研究は、量子力学における情報と擾乱の関係について根本的な事実を明らかにしました。特に驚くべきことに、散乱光が最大になるまさにそのときに量子バックアクションが消失したのです。これは直感に反する現象です」とコメントしました。

さらに博士は「量子オブジェクト(粒子)の周囲環境を工夫することで、その物体に関する利用可能な情報を制御でき、したがってそれが受ける量子ノイズも制御できることを示しました。この発見によって、新たな量子実験の可能性が開け、より高感度な測定にもつながるでしょう」と述べ、環境エンジニアリングによる量子計測の新展開に期待を寄せています。

今回提案されたによるバックアクション低減手法は、量子計測や量子制御のさまざまな分野で応用が見込まれています。

例えばこの手法により、原子よりはるかに大きな物体でも量子状態(重ね合わせ状態など)を生成・維持できると考えられています。

前例のない大きな質量スケールで量子力学の基本原理を検証できると期待されています。

量子論と重力の境界領域(量子重力の予兆となる現象)を探る実験が可能になると考えられています。

極めて微小な力を検出する超高感度センサーを開発できる可能性があります。

特に、大型の物体を量子的な振る舞いのまま宇宙空間で観測しようという野心的な計画に、本研究の成果が役立つ可能性があります。

例えば欧州で提案されているMAQRO(マクロ量子振動子)計画は、これまでで最大規模の物体を用いて量子物理の原理を検証しようとする人工衛星ミッションであり、バックアクションの抑制技術がその成否を左右すると期待されています。

現在、研究チームはこの理論的な手法を実験的に実証すべく準備を進めており、将来的な実用化に向けて新世代の量子センサー開発を視野に入れています。

本研究は、前述の「浮揚オプトメカニクス」という新興分野の流れの中に位置付けられます。

レーザーで真空中に粒子を浮かせて巧みに制御するこの技術により、科学者たちは粒子の運動を極限までコントロールし、量子状態の保持や室温での量子現象観測などに次々と成功しています。

バックアクションによる量子ノイズの“沈黙”という今回の発見は、そうした精密制御技術に新たな地平をもたらすものです。

大きな物体の量子現象を探究し、未知の物理や超高感度計測に挑む科学の最前線に向けて、鏡に浮かぶナノ粒子が静かに道を照らし始めています。

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量子世界では鏡の中心で本物と鏡像が溶け合う観測不能ゾーンが発生する (3/3)のコメント

ロゥレベル・バーチャルマキナ

面白すぎる!測れないならばゆらぎもまた不要である……ってこと?!

ひこさん。

量子とは、今の、文章を、読んでいると、パーフェクトに、近く、アダマイサラー、の、罠には、引っかかるな。以上。

ゲスト

これは観測者効果を理論上排除もしくはコントロールできる手法、ってことでいいのかな?

BLG

いつも楽しく読ませていただいてます。

参考文献と元記事を明記しているのと、元記事から大きく逸脱しない内容で、信頼出来るサイトだなと思って読ませてもらってます。

ただ、(元記事も大概ですが)最近タイトルの煽りが強すぎると思います。内容は良いのに、煽りすぎてるタイトルで怪しい内容に見えてしまうのは勿体ないと思います。

物理というジャンルに興味を引くためにもタイトルが大事なのは分かります。一方で、論文のタイトルは大抵、誇張にならないギリギリを攻めてるので、そこを誇張し始めるともう嘘になってしまうと思っています。もう少し原著論文に従ったタイトルにしてもらえた方が、科学ニュースとして信頼できます。

これからも楽しみにしてます。

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