ボクサーのパンチ174発分の威力
プラテオサウルス(Plateosaurus)は、今からおよそ2億1400万~2億400万年前の三畳紀後期にヨーロッパで繁栄していた大型の草食恐竜です。
全長は5〜10メートル、体重は1トン(600キロ〜最大4トン)にもなり、長い首、小さな頭部、そして特徴的な長い尾を持っていました。

近年、スイスのフリックで発掘されたプラテオサウルスの化石には、非常に保存状態の良い尾の骨格が含まれており、2021年からウィーン自然史博物館に展示されています。
この尾の骨格には、従来の化石には珍しい「ムチ状の先端」が完全な形で残されており、科学者たちはそこに注目しました。
この尾の先端部分は、全体の約3割を占めるほど細く、しなやかに曲がる構造をしており、まさに「しなり打ち」に適した形状。
研究者たちは、これが防御用のムチとして使われていたのではないかと考え、現代のオオトカゲやイグアナの尾打ち行動と比較することで、その威力を計算しました。
その結果、尾の先端部分だけでも約1.6キロジュールの打撃を与えることができたと推定しました。
さらに尾の全体を横に振った場合、最大で約174キロジュール(kJ)もの運動エネルギーが発生することが示されたのです。
これまでの研究で、現役のプロボクサーのパンチがだいたい1キロジュールとされているので、プラテオサウルスの一撃はプロボクサーのパンチ174発分の威力に達すると考えられます。
これは肉体に直撃すれば、小型の恐竜などであれば即死レベルですし、大型の捕食者に対して十分な防御になると見られます。