顔の魅力は絶対評価ではなく「相対評価」だった?
今回の研究では、47人の大学生(全員右利き、視力正常)が被験者として参加しました。
彼らには、合計160枚の女性の顔写真のペア(髪型やアクセサリーを取り除いた加工済み画像)を見せ、次に「親切」「冷淡」といった性格を表す単語を提示します。
そして「この単語はどちらの顔に当てはまるか?」を判断させるという手法で、脳の反応を測定しました。
鍵となるのは、ターゲットとなる片方の顔が「中程度の魅力」に固定されていたことです。
その隣に置かれる背景の顔だけを「とても魅力的」または「魅力が乏しい」という条件で変化させました。

データ分析の結果、以下のような傾向が明らかになりました。
・背景の顔が“魅力に乏しい”とき、ターゲットの顔は「親切そう」「友好的」といったポジティブな性格特性と結びつけられる確率が有意に高くなった
・そのとき脳内では、“意味的な違和感”を示すN400と呼ばれる脳波成分の振幅が小さくなり、「その性格は妥当だ」と無意識に感じている可能性が高まっていた(=顔を見て、迷いなくすぐにポジティブな性格と結び付けられること)
・さらに、感情的関与を示すLPP(遅延正電位)が大きくなり、「この人、感じがいい」と思いやすくなる心理的傾向が見られた
つまり、私たちは「顔そのもの」を見ているようでいて、実は「相対的な位置」に強く影響されているのです。
単独で見ればふつうの顔でも、隣に“不利な比較対象”があるとき、その顔は輝きを増していました。
まさに「隣の人の顔が地味だと、自分が良く見える」という、少々残酷な心理メカニズムが働いていたのです。