美しさが社会的強みにならない文化圏とは?
今回の研究では、世界68の言語を対象に、AIが学習した「美しい」「醜い」といった言葉の意味的なつながりを分析しました。
具体的には、「美しさ(beautiful)」という語が、その文化圏における社会的な「成功(success)」や「信頼(trust)」とどれくらい近いかを数値化することで、その言語圏における“美の価値”を測定したのです。
結果は驚くべきものでした。
たとえば英語圏では、「美しさ」は「成功」や「能力の高さ」「自信」と強く関連づけられていました。
これは「美しい人は有能で信頼できる」といったポジティブなステレオタイプが深く根づいている証拠です。
特にフランス、イタリア、フィンランドなど西ヨーロッパの国々で顕著でした。

ところが東南アジアのベトナムやミャンマー、さらには東欧のルーマニアでは、こうした関連性がまったく見られなかったのです。
むしろ「美しい」という語が「無能」や「失敗」と結びついているケースさえありました。
このような文化圏では、美しさがかえって「表面的なもの」「信用できない」といったネガティブな印象をもたらす可能性があるのです。
研究チームは、こうした違いが宗教観や歴史的背景、社会規範の違いから生じているのではないかと考えています。
たとえば、「内面の美徳」や「謙虚さ」が重視される文化では、外見の美しさが評価軸として優先されない傾向があるのかもしれません。