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平和の宗教が「仏教原理主義過激派」に変貌する原因を解明 (3/3)

2025.06.11 22:00:02 Wednesday

前ページ“平和の宗教”が戦闘モードになる瞬間

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宗教を守るはずが社会を壊す――特権政策のブーメラン

宗教を守るはずが社会を壊す――特権政策のブーメラン
宗教を守るはずが社会を壊す――特権政策のブーメラン / Credit:Canva

今回の研究は、仏教国における暴力の問題を通して、宗教と国家の関係が宗教平和に与える影響を浮き彫りにしました。

そのメッセージは仏教にとどまらず一般化できます。

「どの宗教も状況次第で暴力化し得る」という点です。

決して仏教そのものが他宗教より暴力的だということではなく、逆にどんな平和的教えの宗教でも、国家権力と結びつけば過激化する可能性があるのです。

重要なのは宗教の教義そのものよりも、それを取り巻く政治的環境だと著者らは強調しています。

サイヤ准教授は「平和を維持するつもりで多数派宗教を優遇すると、皮肉にもそれが暴力の火種になることがある」と指摘します。

政府としては多数派宗教を厚遇することで国民の結束や政権の正統性を高め、紛争を防げると考えがちですが、現実には特権を与えられた宗教勢力が暴走し、社会の安定を損ねてしまう「逆効果」が見られるのです。

今回の実証結果は、この「宗教特権の逆効果」を具体的に示したものと言えるでしょう。

では解決策は何でしょうか。

研究チームは、宗教間の平和と安定を図る政策として政教分離と信教の平等・自由を挙げています。

具体的には、以下のような原則に基づく社会制度が望ましいと提言しています。

政教分離:政治権力と宗教組織を明確に分離し、国家が特定の宗教に肩入れしない。

宗教間の平等:歴史的に優勢な宗教であっても他の宗教と同等に扱い、法制度上の特権を認めない。

信教の自由:すべての市民に信仰の選択・実践の自由を保障し、どの宗教にも改宗や布教の権利を認める。

研究者らは「国家は宗教と国家を切り離し、多様な信仰を平等に扱う政策を追求した方が、結果的に安定に資する」という趣旨を述べています。

これは宗教的寛容(トレランス)の重要性を説く近年の知見とも合致します。

実際、宗教の自由度が高い社会では過激思想が公開の議論で批判に晒されやすく、過激派が支持を集めにくい傾向があります。

逆に政府が弾圧的すぎても地下に潜って過激化する恐れがありますが、少なくとも「一宗教を公然と優遇する」体制は多宗教社会に不和と暴力をもたらすリスクが高いと言えるでしょう。

本研究は、仏教を題材に「宗教と国家の関係性」が宗教平和の鍵を握ることを明らかにしました。

仏教に限らず世界各地で台頭する宗教ナショナリズムに対し、安易に多数派宗教と政権が結託することの危うさを示唆するものです。

著者らは「宗教と国家の同盟関係が本当に有益なのか、当事者たちが再考することが望まれる」と述べています。

宗教的熱狂が政治権力と結びついて暴力という牙をむく現象は、21世紀に入って顕著となった宗教暴力増加の一因とも指摘されています。

本来は人々の心の支えであるはずの宗教が「武器」と化す皮肉なパラドックスを克服するためには、国家が宗教と適切な距離を保ち、多元的な社会の中で信仰の自由と平等を保障していくことが不可欠と言えるでしょう。

これは仏教圏のみならず、世界の平和と安定に向けた重要な示唆です。

研究者らの発信するこのメッセージは、今後の宗教政策や国際安全保障の議論に一石を投じるものです。

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平和の宗教が「仏教原理主義過激派」に変貌する原因を解明 (3/3)のコメント

あろ

宗教というより特権が原因なのでは。。

ゲスト

権力は相手が宗教であってもそれを腐らせるという話ですね。
弱者を優遇すれば弱者も同じように腐りますし、強者に権力を持たせても腐るわけです。
他者を攻撃する大義を与えてはいけないということです。

たけ

そりゃ国民全員仏教徒なら当然そうなるわな
国の中に仏教があり
国としての意味は国民の自由と平和を守ることだから、国の原理が優先されるだろう

ゲスト

原理主義だの暴力だのが目立つユダヤ-キリスト-イスラムのアブラハム3兄弟宗教も、社会内で優遇や特権的立場にない+大きな根拠地とのアクセスが遮断されている状況では平和的な振る舞いをしてましたしね

ゲスト

日本の極右運動も歴史的に仏教と関りが深い
「八紘一宇」と言い始めた国柱会とか

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