なぜ人は寝ると良いアイデアが浮かぶのか?

勉強や仕事で、いくら考えても全然アイデアが浮かばず、困った経験はありませんか?
それが突然、ふとした拍子に「そうか、そうだったのか!」と解決方法がひらめくことがあります。
この体験は心理学では「アハ体験(Aha-Erlebnis)」「エウレカ(Eureka moment)」などとも呼ばれます。
名前が多様なのはひらめきの瞬間がどの文化でも名付けるに値する貴重で特別な瞬間だからでしょう。
そしてこの「ひらめき」には不思議な特徴があります。
突然それが起きると、直前まで苦戦していた問題が急に簡単に解けるようになり、認知テストの成績なども一気に向上します。
しかしその瞬間がいつ訪れるのかは全く予測できません。
また、同じ問題に取り組んでも、ひらめきを経験する人とそうでない人がいます。
一体、この「ひらめき」はどのようにして生まれるのでしょうか?
科学者たちはこの謎を100年以上前から解き明かそうとしていますが、まだ明確な答えは得られていません。
昔から、「一晩寝て考えたらいい」とよく言われますが、睡眠は本当にひらめきを助けるのでしょうか?
実際、睡眠が記憶を定着させたり、記憶の整理や再編を行ったりすることは、多くの研究で証明されています。
この睡眠中に脳が情報を整理する働きを「インキュベーション効果(熟成効果)」と言い、睡眠が問題解決を後押しする可能性に注目が集まっています。
しかし、睡眠がひらめきを引き出すという説には矛盾もあり、明確な結論が出ていないのが現状です。
特に最近のある研究は、「完全に眠る直前の浅い眠り(N1睡眠)」こそが、ひらめきをもたらす特別な状態だと報告しました。
この研究が広まったことで、「ウトウトしている時に良いアイデアが浮かぶ」という考え方が定着しつつあります。
ところが今回、ドイツの研究チームが注目したのは、それよりもう少し深い「N2睡眠」という状態でした。
睡眠には実はいくつかの段階があり、N1睡眠よりさらに深いN2睡眠こそが、ひらめきを生み出すのではないか、と研究者たちは考えました。
浅い眠りと深い眠り、ひらめきを呼ぶのは一体どちらなのでしょうか?
研究チームはこの謎を解明するために、ある実験に取り組みました。