聞こえ方に大きな性差はなかった
実験の結果、最も小さな音――たとえばささやき声のようなごく弱い音――に対しては、女性のほうが男性よりわずかに反応しやすい傾向がありました。
実際、女性は男性よりこうした音に対して約14%多く覚醒反応を示していました。
しかし、赤ちゃんの泣き声のようにある程度の音量がある音に対しては男女の間にほとんど差が見られなかったのです。
つまり、赤ちゃんの泣き声をきっかけに目を覚ましやすいかという点においては、男女の聴覚に機能的な違いはないと考えられます。

一方、実際の育児場面では、赤ちゃんの夜泣きに対応する回数は、母親のほうが父親の約3倍多くなっていました。
研究者たちはこれを「聴覚の差」では説明できないと結論づけています。
つまり少なくとも、音量が一定以上であれば、男女の反応には大きな差はなく、「女性は本能的に赤ちゃんの声に反応する」という事実は存在しない可能性が高いのです。
これは夜中に赤ちゃんが泣いた場合、なかなか男性側が対応してくれないという問題や印象に対して生まれた通説であり、実際は聴覚の問題ではなかったということになるのでしょう。
こうした育児経験者の体験談や印象による話しが、いつの間にか科学っぽい通説になってしまったというのが「男性は赤ちゃんの声に気づきづらい」「女性は母性で赤ちゃんの声を察知しやすい」という話の真相のようです。
今回の研究は、「聞こえるかどうか」は性別で決まるものではなく、むしろ状況や意識の違いによって左右される可能性の方が高いことを示しています。
赤ちゃんの泣き声をきっかけに反応する覚醒機能は、男女どちらにも等しく備わっています。そう考えると、これまでとは少し違った目線で育児をとらえ直せるかもしれません。
要は「男も女と同じように聞こえてるのに、対応しない」という残念な事実がわかってしまったわけか。
無視しているということになってしまいますものね。
うむむ…。