三畳紀末に起きた大量絶滅事件
三畳紀の終わりには、大規模な火山噴火と気候変動により、地球上の種の約75%が絶滅したとされています。
しかし、この「三畳紀末の大量絶滅」を地上の化石記録で直接確認できる例は非常に少なく、その直前にどんな生物がどれだけ存在していたのか、研究者たちは長年手がかりを探してきました。
今回の発見が特に重要なのは、そうした空白期間の“ギャップ”を部分的に埋めた点にあります。
新種の翼竜は、化石記録が途絶えていた三畳紀末の時期の一端を補完するものであり、絶滅前夜の生物相を具体的に描く鍵となる存在なのです。
また、同じ地層から発掘された他の生物も見逃せません。
トクサが生い茂る川辺には、装甲をまとった爬虫類やワニに似た肉食性の捕食者、さらに現代のトゥアタラ(ムカシトカゲ)に近い小型爬虫類、初期のカエル、そして靴箱サイズの甲羅とトゲを持つカメまでが共存していました。

この発見の裏には、膨大な手作業がありました。
化石の準備作業は、スミソニアン博物館の「FossiLab」で数千時間をかけて行われ、ボランティアのスザンヌ・マッキンタイア氏が化石から新種の翼竜(Eotephradactylus mcintireae)の顎の骨を発見したことが、種の命名にもつながりました。
属名「Eotephradactylus」は「灰の翼を持つ夜明けの女神」を意味し、火山灰に埋もれた地層と、翼竜の進化系統の根元に位置する存在であることを象徴しています。
種小名「mcintireae」は、長年の労をねぎらい、発見者であるマッキンタイア氏の名を冠したものです。
完全に鳥。