北米最古の翼竜「灰の翼を持つ夜明けの女神」
今回発見された新種の翼竜は、体のサイズが現代のカモメほどしかありません。
私たちの肩に楽に止まれるほどの小さな翼竜だったようです。
しかしこの生き物が生きていたのは、今からおよそ2億900万年前の三畳紀末のこと。
超大陸パンゲアがまだ一つにつながっていた時代であり、北米とヨーロッパも地続きだったため、翼を使わなくても「歩いて渡れる世界」だったのです。
この新種の翼竜は、米南西部・アリゾナ州にある化石の森国立公園の「オウルロック層」と呼ばれる地層で発見されました。
この地層には火山灰が豊富に含まれており、その鉱物成分から年代が正確に測定できることが特徴です。
今回の発見は、その地層が約2億900万年前のものであることから、新種の翼竜が三畳紀末の直前に生息していたことを裏付けました。

この翼竜が生きていた当時の環境は、乾燥したモンスーン型気候で、季節ごとに一時的な雨が川をあふれさせ、周囲の動植物や火山灰を巻き込んで堆積していました。
チームは、洪水によって堆積した地層の中から1,200点以上の化石を発掘。
骨、歯、魚のウロコ、そして化石化したフン(コプロライト)などが含まれ、かつての多様な生態系の様子を鮮明に描き出しています。
特に注目されるのは、新種の翼竜の歯に見られる摩耗の痕です。
この翼竜は、当時の河川に生息していた硬いウロコを持つ原始的な魚類を捕食していたと考えられています。
前歯には獲物を掴むためのキバのような歯、奥歯には獲物を切り裂くための刃状の歯が並び、現代の翼竜とは異なる「歯の多様性」を持っていたことも大きな発見でした。