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Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部
history archeology

イノシシを持ち寄る「フェス文化」が1万年前のイランにあった⁈

2025.07.15 20:00:56 Tuesday

友人宅でのパーティーに招かれた際、「何を持っていこうかな?」と悩んだ経験はあるでしょう。

現代ならワインや手土産のお菓子などが定番ですが、今から約1万年前のイランの祝宴では、なんと山を越えて巨大な野生のイノシシを持ち寄っていたようです。

この驚くべき事実は、オーストラリア国立大学(ANU)の考古学チームにより明らかにされました。

舞台はイラン西部ザグロス山脈に位置する「アシアブ(Asiab)」遺跡。

まだ農耕も牧畜も始まっていなかったこの時代、なぜ人々は重くて危険なイノシシを遠方から運び、集団で祝宴を開いたのでしょうか?

研究の詳細は2025年7月3日付で科学雑誌『Communications Earth & Environment』に掲載されています。

Guests at a feast in Iran’s Zagros Mountains 11,000 years ago brought wild boars from all across the land https://theconversation.com/guests-at-a-feast-in-irans-zagros-mountains-11-000-years-ago-brought-wild-boars-from-all-across-the-land-260179
Transport of animals underpinned ritual feasting at the onset of the Neolithic in southwestern Asia https://doi.org/10.1038/s43247-025-02501-z

70キロ離れた場所からイノシシを持参していた

イラン西部のアシアブ遺跡で発見されたのは、直径20メートルにも及ぶ円形の建物の内部に封じられた19頭分の野生イノシシの頭蓋骨でした。

解体の跡が残されていたことから、これらは大規模な祝宴で消費された可能性が高いと考えられています。

注目すべきは、この地域に野生イノシシが自然に生息していたにもかかわらず、わざわざ遠くからイノシシを運んできたという点です。

研究チームは今回、5頭のイノシシの歯を分析し、歯のエナメル質に含まれる酸素同位体やストロンチウム同位体比、さらにはバリウム濃度を詳細に調査。

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イノシシの歯を分析した手順/ Credit: Petra Vaiglova et al., Communications Earth & Environment(2025)

その結果、少なくとも4頭のイノシシが遺跡から70km以上も離れた場所から持ち込まれていたことが判明したのです。

しかもそれらのイノシシは異なる季節に生まれ、異なる食生活を送っていたため、同じ群れ出身ではないことが明らかになりました。

単なる食料調達なら、近場で狩れば済むはず。

それでもなお遠方の個体を選び、山岳地帯を越えて運んできたという事実は、この祝宴に強い象徴性と社会的意義があったことを示しています。

次ページ産地のイノシシで絆を深め合う?

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