70キロ離れた場所からイノシシを持参していた
イラン西部のアシアブ遺跡で発見されたのは、直径20メートルにも及ぶ円形の建物の内部に封じられた19頭分の野生イノシシの頭蓋骨でした。
解体の跡が残されていたことから、これらは大規模な祝宴で消費された可能性が高いと考えられています。
注目すべきは、この地域に野生イノシシが自然に生息していたにもかかわらず、わざわざ遠くからイノシシを運んできたという点です。
研究チームは今回、5頭のイノシシの歯を分析し、歯のエナメル質に含まれる酸素同位体やストロンチウム同位体比、さらにはバリウム濃度を詳細に調査。

その結果、少なくとも4頭のイノシシが遺跡から70km以上も離れた場所から持ち込まれていたことが判明したのです。
しかもそれらのイノシシは異なる季節に生まれ、異なる食生活を送っていたため、同じ群れ出身ではないことが明らかになりました。
単なる食料調達なら、近場で狩れば済むはず。
それでもなお遠方の個体を選び、山岳地帯を越えて運んできたという事実は、この祝宴に強い象徴性と社会的意義があったことを示しています。