ミトコンドリア置換法により8人の子供が誕生する
ミトコンドリア置換法の原型とも言える研究は、1990年代後半にアメリカで行われました。
1997年には、「3人の親を持つ少女」としてアラナ・サーリネンという子どもが誕生しましたが、この時期に用いられた方法は「細胞質置換」と呼ばれ、技術的にも安全性にも課題が残っていました。
その後、倫理的議論や安全性への懸念から、この分野の研究は約20年間凍結状態にありました。
しかし2015年、イギリス政府は議会の審議を経て合法化。
その結果、ようやく臨床研究が再開されるに至ったのです。

そして2025年、ニューカッスル大学が報告した研究成果は、ミトコンドリア置換技術(前核移植)がついに実際の出産と健康な成長という段階に到達したことを示しました。
この方法によって誕生した8人の子どもは、母親から受け継がれるミトコンドリア病の症状はありませんでした。
子どもたちは出生時に健康であり、これまでの発達も正常範囲にありました。
ちなみに、1人の子どもに高脂血症と不整脈が見られましたが、これは母親の妊娠中の健康状態に関係し、治療で改善しました。
また、もう1人の子供には小児てんかんが認められましたが、こちらも自然に寛解しました。
これらの事例を含め、全ての子どもたちは少なくとも5歳まで健康状態を追跡調査される予定です。
ミトコンドリア置換法で出産したある母親は、「科学が私たちにチャンスを与えてくれた」と語っています。
この言葉のとおり、今回の研究は、子どもを持つことを諦めていた多くの家族に新たな選択肢と希望をもたらしました。
父親のミトコンドリアじゃダメなんですか?