新理論が示唆する宇宙論の革命

今回の研究では、「暗黒物質がビッグバン以前のインフレーション期に生まれた可能性がある」という全く新しい仮説が示されました。
この新しい仮説が本当に正しいなら、私たちは暗黒物質に対する理解を根本的に見直さなければなりません。
なぜならこれまでは暗黒物質を「ビッグバンと共に誕生した物質」だと当たり前のように考えてきたからです。
もし暗黒物質が本当にビッグバン以前から存在していたとすれば、私たちが知っている宇宙の歴史は書き換えられることになります。
そして暗黒物質がそのビッグバン以前の時代から存在していたとすれば、暗黒物質はまさに宇宙で最も古く、しかも安定的な存在となります。
イメージすると、私たちが住む宇宙はビッグバンというイベントをきっかけに誕生した巨大な建物であり、暗黒物質はその建物が建つ前からそこにあった、土台のようなものだということです。
この仮説が正しいなら、科学者が今まで地上の実験施設や巨大な加速器を使って暗黒物質を見つけようとしても全く成果が出なかった理由も説明がつきます。
なぜなら、ビッグバンの前から存在する暗黒物質は、私たちが普段接する通常の物質とは根本的に異なる性質を持っている可能性があるからです。
通常の物質は電磁気力などさまざまな力を通じて相互作用し、光を放ったり、吸収したりします。
しかし、ビッグバンよりも前から存在していた暗黒物質は、宇宙誕生以降に発達したこれらの力とは無縁であり、唯一、重力を通じてしか存在を示さない物質なのかもしれないのです。
まさに、私たちがこれまで暗黒物質を見つけられなかったのは、単純にその探し方が間違っていた可能性があるということです。
この仮説は、科学者たちがこれから暗黒物質を探すための新たな戦略を立てる上でも重要なヒントとなります。
これまでとは違い、地球上の実験ではなく宇宙の観測が暗黒物質の謎を解く鍵になると考えられるようになったのです。
幸いなことに、私たちは今まさにその痕跡を探すための観測技術を手に入れようとしています。
欧州宇宙機関(ESA)が運営する「ユークリッド(Euclid)」宇宙望遠鏡は、宇宙に存在する数十億もの銀河を高い精度で観測し、その位置や形状を詳細にマッピングします。
こうした宇宙の精密地図を作ることで、宇宙のどこに暗黒物質が集まっているのか、その集まり方に独特のパターンがないかを詳しく調べることが可能になります。
研究チームは、ユークリッド望遠鏡の観測結果が出揃えば、この新たな理論を直接検証できるだろうと期待しています。
もちろん、この新しい理論が真実かどうかはまだわかりません。
しかし、もし暗黒物質が本当にビッグバン以前から存在していたことが確認されれば、私たちが教科書で学んできた宇宙の歴史や物理学の常識は大きく書き換えられるでしょう。
かつてインフレーションやビッグバンすらも「荒唐無稽」だと考えられていた時期がありました。
そういう意味では「宇宙論の常識」は移り変わるものだととも言えるでしょう。
この大胆な仮説が科学的な真実として語られる日がいつか来るかもしれません。
つまり重力さんだけは宇宙の初期と互換性ありということなのでしょうか。
なるほどね、わからん
とても興味深いです。
なぜ今まで暗黒物質の存在の痕跡すら捉えることができなかったのかの証明になりますね。
新しい理論の発見は、常に感動を与えてくれます。
宇宙の不思議への興味は尽きることはありません。