ニセの腕をつねられたタコが見せた驚きの反応
撫で始めておよそ8秒後、研究者が偽物の腕をピンセットでつねると、隠れていた本物の腕に触れていないにもかかわらず、タコは一斉に驚きの反応を見せました。
ある個体は腕を引っ込め、あるいは体色を一気に変化させ、また別の個体は逃げ出すような動きを示しました。
まるで自分の腕が傷つけられたと感じたかのような反応だったのです。

この反応は、偽の腕と本物の腕を同時に撫でたときだけに見られました。
逆に、撫でるタイミングをずらしたり、偽の腕の見た目が本物と違ったりした場合には、錯覚は成立せず、防御反応も起こりませんでした。
つまり、視覚・触覚など複数の感覚がうまく統合されたとき、タコの脳も「これは自分の腕だ」と誤認していたと考えられるのです。
この結果はタコにも「身体所有感」が存在することを示唆します。
そしてそれは、彼らが私たち人間とはまったく異なる神経系の構造と進化史を持ちながらも、「自分という存在」を把握している可能性があるということを意味するのです。