ザトウクジラは約2カ月の断食&移動で体脂肪が36%減少する

分析の結果、ザトウクジラは3月~5月にかけて最も太り、8月~12月にかけて最も痩せていました。
そして6~8週間の移動中に、体脂肪が平均して36%低下していることが明らかになりました。
この変化により消費された体脂肪量は体積12立方メートル、重さにして約11トンに相当すると推定されます。
なんと、これはアフリカゾウ2頭分、あるいはシティバス1台分の重量と同じです。
さらにエネルギー換算すると、約1億9600万キロジュール。
これは、成人1人が62年間に摂取するカロリー量に匹敵します。
そしてその燃料源となるのが、南極オキアミ 約57トン分でした。
この量はエアバスA320旅客機の離陸時重量を超える量に相当すると研究チームは説明しています。
人間に例えるなら、体重90kgの人が、2ヶ月で30kgの脂肪を臓器障害などの健康被害なしに失うという、常識外れの減量です。
そしてクジラたちは、この大減量を経て、無事に出産や育児を終えることができます。

これは、ザトウクジラの脂肪組織が、効率よくエネルギーに変換されていることを示しています。
しかし、このクジラの生存戦略は、1つの条件に大きく依存しています。
それは、南極の豊かなオキアミ資源です。
近年、南極では海氷の減少や気候変動により、オキアミの個体数が大きく減少していると報告されています。商業捕獲の影響も無視できません。
このオキアミの減少は、ペンギンなど他の捕食者だけでなく、体脂肪の減少を補うための「大食いなクジラ」たちに大きな影響を与えます。
今回の研究は、クジラ1頭が生きて繁殖するのに、どれほどのエネルギーとオキアミが必要なのかを、はじめて定量的に明らかにした点で、重要な意義を持ちます。
そしてこの知見は、今後のクジラ保護政策や南極海の漁業管理における重要な基礎データとなることでしょう。
1年間で体脂肪を大きく変動させなが生きるクジラの暮らしは、私たちに循環保護の大切さを教えてくれます。
それに耐えられる肉体がすごいの一言ですね。