・数千年前の哲学者が語った「美」と、現代の神経科学者が研究対象とした「美」には共通点があった
・「美」の概念は徐々に「曖昧なもの」から「科学で説明できるもの」へと姿を変えている
「美」とは一体何でしょう?言葉で言い表すことのできないその感覚は、長きにわたって「科学」ではなく「哲学」の領域とされてきました。
しかし、ニューヨーク大学の心理学者らによる最新の研究では、「美」は私たちが思っているよりも「シンプル」なものであることが主張されています。
哲学において「美」とは「快」の感情に含まれ、数ある感情の中でも特別なものとして扱われてきました。しかし、この研究の中で「美」は、全く特別なものではなく、単に「とても強烈な」快の感情であることが示されたのです。
研究の筆頭著者であるアンネ・ブリエルマン氏は、次のように語ります。「美を経験するためには、多くの時間を要することが一般的に知られています。しかし、私たちの研究ではそれを否定します。美を感じるためにはたったの “1秒” あれば十分なのです」
研究では、あらゆる時代における「美」について分析。その対象はプラトンや、その著書に「美学」を持つ18世紀の哲学者バウムガルテン、19世紀の劇作家オスカー・ワイルド、初期の心理学者グスタフ・フェヒナー、そして神経科学の分野における「近年の研究」にまで及びました。
その結果わかったことは、「美」にはある程度の法則があるということ。具体的には、「左右対称性」や「丸み」といったものは「美」の要素として考えられることが多いことが分かりました。
もちろんそこには「例外」もあります。マリリン・モンローの「口元のほくろ」が男性に大ウケしたように、左右「非」対象が新たな「美」を作り出すこともあるのです。
また、興味深いことに、数千年前の哲学者たちが「美」を「快の感情」であると主張していたことは、今日の神経科学者たちが研究において、「美」の感覚が眼窩前頭皮質にある「快の感情」を司る部分を活性化させるとした結論と一致しています。
この研究が示すように、「美」とはとても「曖昧なもの」であるといった常識が崩れつつあります。“Beauty is in the eye of the beholder.(美の定義は人によって異なる、蓼食う虫も好きずき)” といったことわざがありますが、それが「嘘」だったと証明される日も、そう遠くないかもしれません。
via: sciencedaily / translated & text by なかしー