新発見がもたらす生命進化への新視点
古細菌と細菌がナノサイズのチューブで直結し、代謝物を融通し合っている――この姿は、真核生物の起源に関する進化ストーリーの一幕を実際に切り取ったかのようです。
研究チームも論文の中で、この相互作用が真核細胞の共生進化の初期段階を反映する可能性を示唆しています。
すなわち、20億年前の祖先的な古細菌と細菌もこのように手を取り合い、徐々に相棒関係を深めていったのではないか、というわけです。
最初は「糸電話」で外から会話していた関係が、やがて相手なしでは生きられないほどに密接になり、ついには片方がもう片方の細胞内に住み込むような完全なる共生(内共生)へと発展したとしても不思議ではありません。
今回の発見は、真核生物の共生進化の初期段階を思い起こさせる可能性を示した点に意義があります。
とはいえ、注意すべき重要な点は、研究者たちが実際に物質の受け渡しそのものを直接観察したわけではないということです。
ナノチューブでつながっている場面は確認できましたが、水素や栄養分子がその管を通って行き交う瞬間を捉えたわけではありません(そこまでの高解像度での可視化や測定は現段階では難しいでしょう)。
あくまでゲノム情報と形態観察から「交換しているはずだ」と推測している段階であり、この“小包交換”が起きている確証を得るには今後さらなる研究が必要です。
それでも、古細菌と細菌の直接的なつながりを見出した今回の成果は、生命進化の謎に迫る上で画期的な一歩です。
生命史上最大の発明とも言える真核細胞の誕生に関して、仮説として知られていた共生のシナリオと実在の生物たちの姿がピタリと重なることを示しています。
私たち人類の細胞のルーツである「共生の絆」が、海岸の浅瀬の小さな微生物たちの間で今も続いているかもしれないと考えると、非常に興味深いです。
この発見は、地球上でいかにして複雑な生命が生まれ得たのかを理解する手がかりとなるだけでなく、極限環境における生態系や生命の適応戦略についても新たな視点を提供してくれるでしょう。
今後、交換される「エネルギー小包」の中身を直接確かめたり、他の古細菌でも似た現象が起きているかを調べたりすることで、生命進化の物語はさらに具体的な姿を私たちに見せてくれるに違いありません。
門外漢なのでわからないんだけど「自分で作れないビタミン」って馬から落馬とか頭痛が痛いみたいに聞こえるのかな