水分不足と「ストレスホルモン」の関係は?
私たちの体の約60パーセントは水で構成されています。
汗や尿、呼気などで常に失われる水分を補うことは、生理的な健康維持に不可欠です。
軽度の脱水でも集中力の低下や気分の悪化を招くのです。
では、水と同じく、体の様々な機能に影響を及ぼす「ストレスホルモン」と水分不足には何か関連性があるでしょうか。
これまでの研究では、体の水分調整とストレスホルモンの分泌には関わりがあることが示されてきました。
そこで研究チームは、この点をさらに調査したいと考えました。
彼らが注目したのは、ストレス反応の主役であるストレスホルモン「コルチゾール」です。
このホルモンは副腎から分泌され、ストレスに対処するために血糖値を上げたり、免疫反応を調整したりする役割を担います。
ただし、コルチゾールの分泌が過剰または慢性的に高い状態になると、心血管疾患、糖尿病、うつ病などの健康リスクが高まるとされています。
そこでチームは、水分摂取量の違いがコルチゾールの分泌反応にどのように影響するかを検証することにしました。
研究では、イギリスの健康データベースを使って、18歳から35歳の健康な男女100名の中から、習慣的な水分摂取量が特に多いグループ(平均4.4リットル/日)と、特に少ないグループ(平均1.3リットル/日)の計32名が選ばれました。
参加者は1週間にわたり、日常的な水の摂取量を記録しました。
その後、Trier Social Stress Test(TSST)と呼ばれる社会的ストレス誘発試験に参加しました。
この試験では、模擬面接や暗算課題を行い、心理的ストレスを意図的に引き起こします。
研究チームは、TSSTの前後で唾液中のコルチゾール濃度、血中のコペプチン(水分調整を行うホルモン「バソプレシン」の安定な指標)、尿の色と浸透圧(体内の水分状態の指標)、そして主観的な不安感、心拍数、血圧を測定しました。