水分が不足しているとコルチゾールが55%も多く分泌される
研究結果は驚くべきものでした。
ストレステスト中、両グループとも主観的な不安感や心拍数の上昇は同程度でしたが、コルチゾールの反応には明確な差が出ました。
コルチゾール濃度の変化は、水分摂取が少ないグループで平均6.2ナノモル/リットル、水分摂取が多いグループで平均4.0ナノモル/リットルでした。
これは、水分摂取量が少ないとコルチゾール濃度が約55%も高くなり、その反応が強まることを意味しています。
統計的に有意であるだけでなく、生理学的にも重要な差と評価されました。
では、どうして水分摂取量が少ないと、体内でストレスホルモンが溢れるのでしょうか。
研究チームは、水分摂取量が少ないグループは、コペプチンの濃度も水分摂取の少ないグループで有意に高くなっていることも発見しました。
これは、体が慢性的な脱水状態にあることで、水分調節を促すバソプレシン系が過剰に働いていたことを示しています。
しかし、バソプレシンは腎臓で水分を保持する作用を持つだけでなく、下垂体に働きかけてACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を分泌させ、最終的にコルチゾールの分泌を促します。
つまり、水分不足が続くことで活性化される水分調節機能は、別のルートとして脳にも作用してしまい、結果としてストレスホルモンであるコルチゾールを大量に作ってしまうのです。
もちろん、この研究には限界もあります。
サンプル数が32名と少ない点や、水分摂取量が自己申告ベースである点、他のホルモンや長期的健康影響までは評価されていない点などが挙げられます。
今後は、より詳細なテストや長期的な健康リスクへの解明が課題となるでしょう。
それでも、この研究が示した「水分不足がストレスホルモン反応を増幅させる」という事実は、私たちの生活習慣に直接影響を与える重要な知見であることは間違いありません。
明日、あなたにプレゼンや試験、あるいは大事な予定が控えているなら、まずはコップ1杯の水を飲んでから出かけましょう。
その一杯が、あなたの体をストレスから少し守ってくれるかもしれません。