なぜ“しょっぱい食事”は血圧を上げるのか?長年の謎に挑んだ研究
日本人の多くは、世界の中でも塩分摂取量が多いといわれています。
厚生労働省の調査によれば、平均して1日10g前後(欧米では7~8g程度、WHOは5g未満を推奨)の塩を口にしている人が多いのです。
確かに日本食は、味噌汁や漬物、しょうゆなど、日常的な食事の中に塩分がたっぷり含まれています。
そのため、年に一度の健康診断で「血圧が高めですね」と言われてしまう人も珍しくありません。
では、なぜ塩分を多くとると血圧が上がるのでしょうか。
これまでの医学では、塩分(ナトリウム)をとりすぎると血液中の塩分濃度が上がり、その濃度を下げるために血液中に水分が多く引き込まれ、結果として血液の量が増え、血管にかかる圧力――つまり血圧が高くなると説明されてきました。
また、腎臓は体内の塩分バランスを調整し、余分な塩分を排出する働きを持っていますが、腎臓の働きがうまくいかないと体に塩分が残りやすくなり、やはり血圧が上がりやすくなると考えられてきました。
つまり、「塩分をとる→血液中の塩分濃度が上がる→血液の量が増える→血管に圧力がかかる(血圧が上がる)」という流れが従来の説明です。
しかし、同じ量の塩分をとっても血圧があまり上がらない人もいれば、逆に少しの塩分でも敏感に反応して血圧が上がる人もいます。
こうした個人差は、従来の説では十分に説明することができませんでした。
こうした疑問に対して最近では、血圧をコントロールしているのは心臓や血管、腎臓だけではなく、脳も重要な役割を担っていることが分かってきました。
たとえば脳の「視床下部(ししょうかぶ/Hypothalamus)」は、自律神経やホルモンの働きを通じて、血圧を細かく調整しています。
さらに、動物実験などから、脳内の免疫細胞である「マイクログリア(Microglia)」が活性化し炎症が起こると、血圧が上昇することも報告されるようになりました。
このような研究の積み重ねから、「塩分を摂りすぎたとき、脳で炎症が起きることで血圧が上がるのではないか?」という新しい仮説が生まれたのです。
今回の研究は、この仮説をラットを用いた実験で確かめています。その結果はどのようなものだったのでしょうか?