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「塩分で高血圧になる理由」塩による“脳の炎症”だった!?最新研究が示す新事実 (2/2)

2025.08.31 12:00:47 Sunday

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塩分が脳に炎症を引き起こす“見えないリスク”

実験の結果、ラットたちは塩分を多く摂取した後、血圧が徐々に上昇していきました。

この変化自体は、これまでの「塩分=高血圧」という常識通りの結果です。

しかし、研究チームがさらに詳しく脳の中を調べていくと、驚くべき事実が見つかりました。

まず、血圧のコントロールに関わる「視床下部(ししょうかぶ)」で、普段は静かに働いているはずのマイクログリア(脳の免疫細胞)が一斉に活性化していたのです。

マイクログリアが活発になるということは、脳の中で“炎症”が起きているサインです。

しかも、視床下部のバソプレシンをつくる神経細胞の周囲に、このマイクログリアが多く集まり、炎症反応が広がっている様子がはっきり確認されました。

さらに興味深いことに、脳で炎症が起こると、「アストロサイト」と呼ばれる神経を守る細胞の“うで”のような部分が、マイクログリアという別の細胞によって食べられて減ってしまうことがわかりました。

本来ならアストロサイトの“うで”が神経細胞を包み込み、神経の興奮を伝える物質を回収して、神経が必要以上に働きすぎないように調整しています。

しかし、その“うで”が少なくなると、神経細胞がずっと興奮したままになってしまうのです。

この異常な神経の活性化が、血圧をコントロールする仕組みを大きく乱していたのです。

実際に、研究チームはこの「脳の炎症」や「グルタミン酸の異常」を薬で抑えたところ、ラットの血圧上昇も抑制できることを突き止めました。

つまり、塩分によって脳の中に炎症が起き、その結果として血圧が上がる、という“新しい回路”が存在する可能性がはっきり見えてきたのです。

この発見は、これまでの「高血圧は腎臓や血管の問題」というイメージを大きく揺るがすものです。

塩分の摂りすぎが、脳を通して高血圧につながるという新たなメカニズムが示されたことで、今後は「脳の炎症をどう防ぐか?」という視点からも、高血圧の予防や治療が考えられるようになるかもしれません。

もちろん、今回の研究は動物実験が中心のため、「本当に人間にも同じことが起こるのか?」という疑問は残ります。

私たち一人ひとりの体質や生活習慣によって、脳が塩分にどう反応するかは違うかもしれません。

しかし、「塩分は腎臓だけでなく脳にも影響する」という事実は、塩分が高血圧以外の問題も引き起こす可能性を示唆します。

今回の研究では、塩分による「高血圧」への影響に主眼が置かれており、「思考や意識」など他の精神・認知機能への影響については直接検証していませんが、グリア細胞の異常や脳の炎症が、うつ病や不安障害、認知機能低下、さらには脳卒中リスクなどさまざまな脳機能障害に関わっているという指摘は、近年他の研究でも増えているため、今後の重要な研究テーマになる可能性はあるでしょう。

塩分と血圧、そして脳とのつながり——この発見が、私たちの健康に役立つ日も、そう遠くない未来にやってくるかもしれません。

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