夢を夢で終わらせない力はどこからくるのか?

夢(SM)を実現させる人たちには、どんな秘密があったのか?
謎を解明するため研究者たちはBDSMに興味を持っている成人263人と、まったく興味のない成人300人の、合計563人を対象にオンラインでアンケート調査を行いました。
調査では最初に、それぞれの人がBDSMについてどのくらい関心を持ち、どれくらい実際に体験しているのかを尋ねました。
具体的には、BDSM的な行為や状況を頭の中で想像する「空想(ファンタジー)」の頻度と、実際にパートナーと行った「実践(実際の経験)」の頻度について、それぞれ細かく質問しました。
またBDSMに関心があるグループの人には、自分がどのような役割を主に好むのかも報告してもらいました。
役割には主に3種類があり、「支配的な役割(Dom:ドミナント)」が好きな人が約25%、「服従的な役割(Sub:サブミッシブ)」が好きな人が約46%、どちらの役割も状況に応じて切り替えることを好む「スイッチ派」が約29%という割合でした。
次に研究者たちは「愛着スタイル」という人間関係のクセに注目しました。
愛着スタイルとは、人が幼少期の経験を元に形成され、大人になってからも人間関係に影響を与えるもので、成人では「不安」と「回避」の2つの尺度で連続的に測られることが一般的です。
例えば、他人に見捨てられることへの不安が強い「愛着不安傾向」や、他人に頼ったり甘えたりするのを避けがちな「愛着回避傾向」などがあり、これらが低い人は逆に安定した愛着スタイル(人を信頼し親密な関係を築きやすい傾向)を持つとされます。
すると、はっきりとした違いが見えてきました。
BDSMに関心があるグループの人たちは、関心がないグループの人たちよりも「愛着の不安」も「愛着の回避」も低かったのです。
つまり、BDSMに興味がある人々は、一般の人々よりも、他人との関係に対して安心感を持ちやすく、不安や警戒心が少ないという結果になりました。
分かりやすく言うと、BDSMを好む人は、人に対して比較的心を開きやすく、信頼関係を築くことが苦手ではないという傾向がある、ということです。
同様の結果は過去に行われた研究でも得られており、BDSM実践者たちの心理的安定性の高さが報告されています。
今回の結果は既存の研究結果をさらに補完する形になり、BDSMについてのネガティブな偏見が実情と合わないことを示しています。
さらに研究チームは、BDSMへの興味の「空想」と「実践」が、それぞれどのように愛着スタイルと関係しているのかをより詳しく調べました。
その結果、面白いことが分かりました。
まず、BDSM的な空想をすること自体は、愛着スタイルとの関連性がほとんど見られませんでした。
つまり、誰でもBDSM的な状況を想像することはありますが、それが特定の愛着スタイルに限ったことではなく、ごく普通に起こることだということです。
ただし、服従する側の空想だけは少し違っていて、「愛着不安」がやや高い人ほど、その空想をする頻度が少し高かったことも分かりました。
一方、実際にBDSMをパートナーと体験する「実践」については、明確な傾向が現れました。
愛着の不安や回避が低く、安定している人ほど、実際にBDSMを体験した回数が多かったのです。
特に、他人との親密さを避けたり、心を許すことを難しく感じたりする「愛着回避」が低い人ほど、BDSMの実践に積極的であることが明らかになりました。
これは、支配的な役割を好む人でも、服従的な役割を好む人でも同じでした。
まとめると、誰でもBDSM的な空想はするけれど、それを実際に行動に移すことができるのは、安心して人と親しくなれる「安定した愛着スタイル」の持ち主だと言えそうです。
空想だけで終わる人と、実際にBDSMを楽しめる人の間には、人間関係への安心感や信頼感という心理的な差があるということなのです。