生命の最初のステップを再現することに成功――アミノ酸とRNAの結合
生命の最初のステップを再現することに成功――アミノ酸とRNAの結合 / Credit:川勝康弘
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生命の最初のステップを再現することに成功――アミノ酸とRNAの結合

2025.08.29 22:00:39 Friday

イギリスのユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)で行われた研究によって、科学者たちは実験室で「生命の誕生」の最初のステップを再現することに成功しました。

生命はRNAという分子にアミノ酸が結び付くことで始まったと考えられていますが、その仕組みは長年謎のままでした。

今回、研究チームは地球が誕生した頃の環境に近い条件を整え、硫黄を含むエネルギー物質を使うことで、酵素を使わずにRNAとアミノ酸を自然に結合させることに成功しました。

これにより、RNAが初めてタンパク質を生み出す仕組みの一端が明らかになりました。

この成果は「生命はどう生まれたのか?」という人類最大の謎に対し、ごくシンプルな化学反応からでも生命らしい複雑さが生まれる可能性を示しました。

生命反応の基礎とも言えるRNAとアミノ酸はいかにして邂逅を果たしたのでしょうか?

研究内容の詳細は2025年8月27日に『Nature』にて発表されました。

Thioester-mediated RNA aminoacylation and peptidyl-RNA synthesis in water https://doi.org/10.1038/s41586-025-09388-y

最初にRNAとタンパク質をくっつけたのは誰?

中央にあるタンパク質生産工場(リボソーム)が左右に伸びるRNAの情報を読み取りつつタンパク質(赤)が生産されている様子
中央にあるタンパク質生産工場(リボソーム)が左右に伸びるRNAの情報を読み取りつつタンパク質(赤)が生産されている様子 / Credit:Canva

生命はとても複雑ですが、分子のレベルで見ると主役になっているのは「タンパク質」です。

タンパク質は爪や皮膚や髪だけでなく、体の中のさまざまな働きを担う重要な分子です。

ただし、タンパク質は自分だけで自分を作り出すことはできません。

なぜなら、タンパク質は「アミノ酸」と呼ばれる小さなパーツがたくさんつながってできていて、どのような順番でつなぐかを示す「設計図」が必要だからです。

ここでいう設計図の役割を果たしているのが「核酸」と呼ばれる分子です。

特によく知られているのは「DNA(デオキシリボ核酸)」です。

DNAは生物の設計図を長期間保存する役割を持ちます。

でも、DNAはそのままではタンパク質を作る指示を出すことができません。

細胞がタンパク質を作るときには、DNAの情報を「RNA(リボ核酸)」という別の核酸分子にまずコピーします。

このRNAが持つ情報をもとに、材料となるアミノ酸が一つずつ組み込まれていき、実際のタンパク質合成が行われます。

ここで、「アミノ酸がどうやって運ばれるの?」という疑問が生まれるかもしれません。

アミノ酸は工場の部品のようなもので、それを運ぶトラックが「tRNA(転移RNA)」です。

この小さなRNAは、アミノ酸をしっかり運んで、組み立て場である「リボソーム」(タンパク質を組み立てる場所)に届けます。

ところが、この「tRNA」にアミノ酸を積み込む作業は、実はとても大変です。

この積み込みには「アミノアシルtRNA合成酵素」という特別な種類の酵素(生き物が持つ触媒役のタンパク質)が必要です。

でも、この酵素自体もタンパク質でできています。

つまり「タンパク質を作るためにはまず酵素が必要だが、その酵素はタンパク質でできている」という、ぐるぐると回る“堂々巡り”の問題が生じます。

これはよく言われる「鶏が先か卵が先か」というジレンマにそっくりです。

つまり、「最初の生命がどのようにして始まったのか?」という問いは、とても難しいものなのです。

この難題に対して、科学者たちは「生命の初期にタンパク質合成はどうやって始まったのか?」という疑問をもとに、いくつもの仮説を考えました。

その代表例が「RNAワールド仮説」と「チオエステルワールド仮説」です。

RNAワールド仮説は、DNAやタンパク質よりも前にRNAが主役だったと考える説です。

RNAは情報を持ちながら、簡単な化学反応を進める“便利な分子”でもあるからです。

一方、チオエステルワールド仮説は、硫黄を含んだチオエステルという化学物質が、初期生命のエネルギー源になっていたという考え方です。

チオエステルは、生物が活動するのに必要なエネルギーを運ぶ大切な役割を担っていた可能性があります。

しかし、これらの仮説にも大きな課題が残されていました。

たとえば「RNAとアミノ酸をつなぐ反応」が、水がたくさんある自然の中ではうまく進まなかったのです。

なぜかというと、アミノ酸をRNAにつなげるためには「活性化」(反応しやすくするための工夫)が必要ですが、活性化されたアミノ酸は水の中ですぐに壊れてしまい、長く持ちませんでした。

そのせいで、狙った反応よりもアミノ酸同士が勝手につながってしまう「無秩序な重合」という副反応が多く起きてしまい、RNAとアミノ酸をうまく結びつけるのが難しかったのです。

こうした問題を解決するため、今回の研究では「高度な酵素を使わず、なおかつ水の中で安定して進むシンプルな化学反応」を探し出すことが大きな目標となりました。

すなわち、RNAワールド仮説とチオエステルワールド仮説の間を橋渡しできるような新しい化学反応を発見し、「生命が最初にどのようにしてタンパク質合成を始めたのか」という謎に近づこうとしたのです。

次ページ生命の最初の一歩、実験室でよみがえる

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