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ノエルはグレタより採用で有利!?”名前の響き”が就職採用にも影響すると判明

2025.09.06 20:00:59 Saturday

あなたの名前は、どんな“音の響き”を持っていますか?

私たちは日常生活のなかで、「この名前、優しそうだな」「この名前、なんだか力強い」など、名前から人柄をなんとなくイメージすることがあります。

しかし、その「印象」はどこから生まれるのでしょうか? そして私たちの生活の中にどの程度影響するものなのでしょうか?

これまでにも、名前の文化的な背景や意味が面接の採用や社会的な印象に関係する、という話題はよく語られてきました。しかし、「名前の響きが“無意識のバイアス”を生むのか」という根本的な問いは、はっきりと確かめられていませんでした。

そこでカナダのカールトン大学(Carleton University)の研究チームは、そんな疑問から、名前が含む“どういった音”が人の評価などにどう影響を及ぼすのかを、実験を通じて検証しました。

その結果、同じ能力や経験を持つ二人が面接に臨んだとき、一方の名前が柔らかい響き、もう一方が鋭い響きだった場合、それだけで有利・不利が生まれてしまう可能性が示されたという。

これは「自分の名前」だけでなく、名付け方が子どもの将来にも影響するかもしれない可能性を示唆しています。

この研究の詳細は、2025年3月公開の科学雑誌『Acta Psychologica(アクタ・サイコロジカ)』オンライン版に掲載されています。

Would you hire Liam over Kirk? Name sound symbolism and hiring https://doi.org/10.1016/j.actpsy.2025.104978

「名前の音」が印象を左右する? “音象徴”の不思議な働き

就職活動や書類選考の場面では、最初に目に入るのが応募者の「名前」です。

もちろん多くの企業や担当者は、性別や年齢、人種などの偏見を避けるよう努力しています。

それでも実際には、名前が与える印象が想像以上に大きな影響を持つ可能性は、さまざまな研究から指摘されています。

たとえばアメリカやカナダでは、「白人らしい名前」と「黒人らしい名前」では、書類選考の通過率が大きく違うというデータが存在します。

また、名前から年齢を推測されたり、古風な名前が“まじめそう”だと思われたりすることもあるようです。

このような「名前によるバイアス」は、これまでは主に名前の持つ文化的な意味や民族的な背景が影響していると考えられてきました。

しかし、今回の研究で注目されたのは、「名前の“音そのもの”」が印象に与える影響です。

ここで登場するのが「音象徴(おんしょうちょう:sound symbolism)」という心理学の概念です。

音象徴とは、特定の音や発音が、言葉や名前の意味を超えて、私たちの感覚や印象に直接働きかける現象を指します。

たとえば“ルナ”や“ノエル”のような名前は、柔らかく丸みを帯びたイメージを持たれやすく、逆に“クリス”や“カート”のような名前は、少し鋭く、自己主張が強いイメージを抱かれる傾向があるといいます。

この現象は、世界中のさまざまな言語や文化でも確認されており、人は無意識のうちに音の響きから性格や雰囲気を想像してしまうことが知られています。

そこでカールトン大学の研究チームは、「名前の音」が採用選考のような場面で“有利・不利”に働く可能性があるのではないかと考え、独自の実験を設計しました。

実験では、同じ性別の「柔らかい音(l、m、nなどが入るsonorant:共鳴音)」と「鋭い音(p、t、kなどの無声破裂音)」を持つ名前をペアにし、「誠実さ」や「協調性」など特定の性格が求められる仕事ごとに、ペアになった名前のうちどちらを“その職種に採用したいか”を参加者に選んでもらい、その傾向を調査しました。

この実験は、名前だけの場合だけでなく、名前と写真、名前とビデオ面接など、さまざまな状況でも繰り返し実施されました。

その結果、名前の“音の響き”が無意識のうちに私たちの選択に影響を及ぼす、驚くべき仕組みが浮かび上がってきたのです。

次ページ“ノエル”は有利で“テリー”は不利、名前の響きが生む印象のバイアス

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