不幸感を抱くピークが若者にシフト

これまで多くの研究で、主観的な幸福度は若年から中年にかけて低下し、その後ふたたび上昇するU字カーブを示すとされてきました。
裏返しに、不幸感の高さは中年でピークをつくる現象が一般的な傾向として観察されてきました。
この「中年ピーク」は、米英をはじめ多くの国で、自己申告の抑うつや不安、さらには抗うつ薬の処方や精神科入院などの行動指標とも整合的と報告されてきたのです。
しかし、近年のデータを年代別に追うと様子が一変します。
米国の全国大規模健康調査(BRFSS、毎年40万人超)では、1990年代から2020年代にかけて18〜24歳の「絶望(過去30日すべてでメンタルがよくなかった)」の割合が急増。
女性は約3.2%→9.3%、男性は約2.5%→6.6%と大きく伸びました。
中年でも上昇はあるものの増え方は緩やかで、高齢層はほぼ横ばい――結果として、近年は若い層ほど不幸感が高く、高齢ほど低くなる関係に逆転しています。
英国でも、縦断調査(UKHLS)の精神健康指標(GHQ-12)や年次人口調査の「不安」スコアを解析すると、2010年代後半から若年ほど不安・不調が強く、中年以降は年齢とともに低下する形へと移行。
従来みられた“中年で山形、のち減少”というプロフィールは、2019年以降ははっきり観測されなくなりました。