「パートナーの有無」「親になる」「性的指向」が与える影響
マスターベーションは単なる「性の代替行為」なのか、それとも独立した行動なのでしょうか。
チームはパートナーとの性交渉の頻度を調整して分析しましたが、自慰行為の年齢変化パターンはほとんど変わりませんでした。
この結果は「自慰行為は“パートナーがいないから仕方なくやるもの”ではなく、自律的な性行動として存在している」ことを裏付けています。
ライフイベントによる変化:親になると「減る」傾向
さらに、子どもの有無も分析しました。
親になった人は、なっていない人に比べて、年齢が上がるにつれてマスターベーションの頻度がより早く減少する傾向が見られました。
子どもがいない人は、30歳前後まで頻度が増加し、その後一気に減少。
親になったことが、性の自己表現や時間の使い方に大きく影響を与えていることが示唆されます。
セクシュアリティ・宗教・学歴との関係
性的指向の面では、異性愛者以外(同性愛・両性愛など)の人は、全年齢でより頻繁に自慰行為を行っている傾向がありました。
ただし、年齢ごとの変化パターン自体は異性愛者とほぼ同じでした。
宗教的な背景については、女性では19歳時点で宗教を持つ人の頻度がやや低い傾向があったものの、長期的には影響は見られませんでした。
男性では宗教や学歴による大きな差は観察されていません。
今回の研究から見えてきたのは、「マスターベーションの頻度」は単純に“若いほど多い、年をとると減る”というものではないということです。
人生のさまざまなステージや心の動き、家庭や社会との関わりによって、性の自己表現は揺れ動き続けています。
また「パートナーの有無」に関係なく、自律的な性行動としての自慰行為が多くの人にとって重要な役割を持っていることも、科学的に裏付けられました。