モアイ像を「歩かせた」とは?
イースター島の象徴であるモアイ像は、重いもので重量80トン、高さ10メートルにも達します。
そんな巨像を、島の人々はどうやって何十体も、採石場から何キロも離れた祭壇まで運んだのでしょうか。
研究チームは、最新の3Dモデリング技術と現地での実地実験を駆使し、この難問に挑みました。
調査の対象は、およそ1000体に及ぶモアイ像です。
チームはモアイの特徴的な形状に着目
すると、多くのモアイは底面が幅広いD字型で、前方にやや傾いていることがわかりました。
この設計こそ、「歩かせる」ための工夫だったのではないか――。
そう仮定したチームは、モアイ像を横倒しで運ぶのではなく、立てたまま左右交互に“揺らして”ジグザグに歩かせるという運搬法を実験的に再現しました。

高精度な3Dモデルをもとに、重さ4.35トン・前傾デザインのレプリカ像を制作。
たった18人でロープを使い、片側ずつ引くことで、モアイ像を40分で100メートルも前進させることに成功しました。
従来の木製ソリを使う方式では必要だった大量の人手や木材は不要で、むしろ「歩かせる」ほうが効率的だったのです。
研究者は「一度揺らして動き出せば、思ったより簡単に進みます。力は片腕で十分で、エネルギーの節約にもなる」と語っています。
さらに、実際にイースター島に残る道も「歩くモアイ」に適した構造であることが判明しました。
幅4.5メートル・中央が少し凹んだ独特の道は、モアイ像が安定してジグザグに揺れながら進むのにぴったりだったのです。