なぜ「歩くモアイ説」が有力になったのか?
「歩くモアイ説」は、単なる思いつきではありません。
今回の研究では、3D解析によってモアイ像特有の重心・形状を再現し、実地実験で物理学的にもその可動性を実証しました。
特に大型像であればあるほど、立てたまま揺らす以外に現実的な運搬方法がなくなるということも分かりました。
研究者は「像が大きくなるほど、この方法が唯一の現実的な解になる」と述べています。
また、道路の存在そのものがこの運搬法を裏付けます。
イースター島には、モアイを移動するたびに道が造られ、実際に何本も道が並行して残っていることが観察されました。
「像を運ぶことと道を造ることは一体化していた」と研究者は推測しています。
移動ルートを選定し、障害物を取り除き、安定した道を切り開く――まさに“土木工学と集団知”の結晶と言えるでしょう。

では、従来説を完全に否定できるのでしょうか。
現在、モアイ像の移動について、物理的・考古学的な証拠から見て「歩かせる」以外の説は説明が難しいとされています。
加えて、「歩くモアイ」説はラパ・ヌイの人々の知恵と工夫を評価するものでもあります。
わずかな人数と資源で巨大な石像を運ぶ――これはまさに驚異的なエンジニアリングの賜物です。
研究者は「ラパ・ヌイの人々は限られた資源の中で最適な答えを導き出した。本当に尊敬すべき知恵だ」と語っています。