カカオが秘めた健康パワーとは?
私たちの体は、年を取るにつれて少しずつ体内での「炎症」が進んでいきます。
炎症と聞くと、怪我や風邪の時に赤く腫れたり熱が出たりする反応を思い浮かべるかもしれませんが、老化に伴う炎症はもっと静かで見えにくいものです。
こうした加齢とともに増していく体内の慢性的な炎症は、英語では「炎症老化(inflammaging)」と呼ばれ、最近の研究で、心筋梗塞や脳卒中、認知症など多くの加齢性疾患のリスク因子であることが分かってきました。
しかし、なぜ年を取ると炎症が高まるのか、そのメカニズムや抑制方法についてはまだ解明途上です。
その中で注目されているのが「フラバノール」という植物由来の成分です。
フラバノールは、カカオ豆や緑茶、リンゴ、ブドウ、ベリーなどに豊富に含まれており、抗酸化作用や血管保護作用があることで知られています。
特にチョコレートの原料であるカカオは、世界的にもフラバノールの宝庫として研究が盛んです。
今回の大規模研究では、60歳以上の約2万人の健康な高齢者を対象に、2年以上にわたってココア抽出物サプリメントを摂取するグループと、偽薬(プラセボ)グループを比較し、体内の炎症マーカーがどのように変化するかを調べました。
主な評価指標となったのは、「高感度CRP(hsCRP)」と呼ばれる炎症マーカーです。
この値が高いと、心筋梗塞など心血管疾患のリスクが上がることが分かっています。
研究の結果、ココア抽出物サプリメントを摂取したグループでは、hsCRPの値が毎年平均8.4%低下することが明らかになりました。
特に、もともと心血管疾患のリスクが高かった人ほど、その効果は顕著だったと報告されています。