座りがちな現代人の「少しの意識」は健康促進に意味ある?
便利さが進んだ現代社会では、気がつけば1日10時間以上も座って過ごしているという人が少なくありません。
過去の多くの研究で、長時間の座位行動が肥満や糖尿病、心筋梗塞といった生活習慣病のリスクを高めることが報告されています。
今回の研究が注目したのは「metabolic flexibility(代謝の柔軟性)」、つまり体が状況に応じて脂肪や糖を効率よく使い分ける能力です。
健康な体は、空腹時や安静時は脂肪を燃やし、食後や運動時には糖を主に利用します。
この切り替えがうまくできないと、余った脂肪や糖が体に蓄積しやすくなり、血糖値や中性脂肪が上がりやすくなります。
研究チームは、座る時間を減らすことでこの代謝の柔軟性を改善できるのかを検証しました。
対象となったのは、40~65歳で運動習慣がなく、肥満やメタボリックシンドロームを持つ64人の男女です。
参加者は2つのグループに分けられました。
一方のグループは毎日1時間、座る時間を減らすことを目標に、立ったり歩いたりといった日常の動作を意識して増やすよう指導されました。
特別な運動やジム通いを求めるのではなく、日常の中で「とにかく座る時間を減らす」ことに注目しました。
もう一方のグループは、普段通りの生活を続けるよう指示されました。
全員が6か月間活動量計を装着し、座る・立つ・歩くといった日常の行動がどれくらい変化したのかを記録しました。
さらに、空腹時やインスリン負荷時、軽い運動時や最大運動時の体のエネルギーの使い方を詳しく調べ、代謝の切り替え能力を科学的に評価しました。