遺伝子編集で「菌のお肉」の生産速度が88%増加

肉キノコは実現できるのか?
研究チームは代替肉に使われる菌(フザリウム・ヴェネナータゥム)の遺伝子にハサミを入れました。
CRISPR/Cas9(クリスパー、狙ったDNAを切断するゲノム編集技術)を用いて、この菌から2つの遺伝子を同時に取り除いたのです。
1つは細胞壁を作る酵素「キチン合成酵素」の遺伝子で、これを壊すことで細胞壁を薄くしタンパク質を取り出しやすくします。
もう1つは「ピルビン酸デカルボキシラーゼ」という酵素の遺伝子で、これがあると糖からエタノールを作る際にCO₂(二酸化炭素)が発生します。そこであえてこの経路を弱め、糖から不要なCO₂へ逃げてしまう流れを断ち切り、その分をタンパク質合成に回す狙いです。
こうして2種類の遺伝子を同時に潰した新株を作製し、研究チームはこれをFCPD株と命名して培養を行いました。
結果、菌の性質は劇的に変わりました。
まず、遺伝子改変によってFCPD株の細胞壁は確かに薄くなり、キチン含有量は元の株(WT株)より約29%低下しました(加熱処理前の比較で)。
細胞壁が柔らかくなった分、人がその中の栄養を取り出しやすくなると理論的には考えられますが、今回の試験では全体のタンパク質消化率はWT株よりやや低くなっており、この点は今後の検証が必要です。
またタンパク質中の必須アミノ酸のバランスも改善し、栄養の質を示す指数EAAI(必須アミノ酸指数)は約32.9%向上しました。
つまり、この肉キノコは「硬い殻を破る設計をほどこし、タンパク質の質も向上した」のです。
次に、生産効率の飛躍的な向上が確認されました。
工業規模(5,000リットル発酵タンク)での培養比較では、新株FCPDは同じ重量の菌体(マイコプロテイン)を得るのに必要なブドウ糖を44.3%も削減できました。
言い換えると、砂糖1に対し作れるタンパク質の量が従来株の約2.24倍にも増えた計算です(グルコース→タンパク質への変換効率)。
さらに成長スピードも向上し、一定量のタンパク質を作る所要時間は従来株の約半分近くまで短縮されました(生産速度+88.4%)。
改良によって、菌が糖から作り出すタンパク質の量と速さが大幅にアップしたのです。
環境面での効果も見逃せません。
研究ではライフサイクルアセスメント(LCA)と呼ばれる手法で、原料調達から製造まで含めた環境フットプリントの比較評価が行われました。
その結果、新株FCPDによるマイコプロテイン生産は、従来株に比べ温室効果ガス排出量があらゆる試算シナリオで減少し、その削減率はシナリオによって4%から61.3%に及ぶことが示されました。
投入する糖を大幅に節約できたことが環境負荷低減の主因であり、実際にFCPD株で作った「肉キノコ」の環境性能は、鶏肉の生産と比べても温室ガス排出量や土地利用など多くの指標で環境負荷が低いと試算されています。
培養肉(細胞培養由来の人工肉)との比較でもFCPD株の方が持続可能性が高く、植物由来タンパク質ほどの低負荷には及ばないものの、従来の菌株より格段に環境に優しいことが確認されています。


























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