水を弾くことで浮力を得る「沈まない金属」が作られた
水を弾くことで浮力を得る「沈まない金属」が作られた / Credit:Geometry-Enabled Recoverable Floating Superhydrophobic Metallic Tubes
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水を弾くことで浮力を得る「沈まない金属」が作られた (2/3)

2026.02.09 18:30:55 Monday

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穴だらけでも水に浮かぶ金属チューブを作ってみた

穴だらけでも水に浮かぶ金属チューブを作ってみた
穴だらけでも水に浮かぶ金属チューブを作ってみた / Credit:Geometry-Enabled Recoverable Floating Superhydrophobic Metallic Tubes

何度も沈めても浮いてくるような「水をはじく浮力」を金属に持たせるにはどうしたらいいのか?

そこで今回の研究では、平らな板ではなく「筒」という形に着目し、内側の表面を超撥水にしつつ、太さや長さ、内部の仕切りの入れ方まで含めて徹底的に最適化することで、「強くて、壊れにくく、それでいて沈みにくい金属チューブ」を目指しました。

普通のアルミニウムのパイプの表面を細かく加工し、超はっ水の性質を持たせることで、チューブの外側だけでなく内側の壁でも水を強くはじくようにしたのです。

するとチューブの中に空気の泡を閉じ込め、その空気が水中でも安定して残るようになりました。

また重要なパーツとして、筒の真ん中に入れた「仕切り板」の存在があげられます。

ふつうの筒を傾けると、深いほうの端にかかる水圧が大きくなり、その差によって中の空気が浅いほうの端から押し出されてしまいます。

そこで研究者たちは、筒の中央に水を通さない薄い板を入れ、内部を2つの独立した空気室に分けました。

こうすることで、一方の端が深く沈んでも、その空気室の中だけで圧力が完結し、反対側から空気が逃げにくくなります。

実験では、筒を水平から垂直まで大きく傾けても、水中での浮力がほとんど変わらず、落下させて水面にぶつけるような激しい衝撃にも耐えられることが示されました。

またどのくらいの太さのチューブがいちばんよく浮くかをくわしく調べたところ、内側の直径がおよそ五ミリ前後のものが、水中で自分の重さのほぼ2倍近い浮力(上に押し上げる力)を生み出せることがわかりました。

細すぎても空気が足りず、太すぎても水が入り込んでしまうため、自然界のクモやアリと同じように、「空気をいちばん効率よくためこめるサイズ」が存在することが示されたのです。

水に浮く金属チューブを何本にも束ねたイカダ。
水に浮く金属チューブを何本にも束ねたイカダ。 / Credit:Scientists engineer unsinkable metal tubes

さらに驚かされるのが、「穴をあけても沈みにくい」という性質です。

研究では、直径数ミリメートルの穴を15か所もあけ、全体の一割ほどの金属を削り取った“ぼろぼろのチューブ”を用意しました。

それにもかかわらず、このチューブを水中に押し込むと、やはり浮力の働きでふわりと水面まで戻ってきたのです。

穴から水は入ってきますが、超撥水な内側の壁がしっかり水をはじくため、削り取られた金属のすき間を水が埋めるだけで、中の大きな空気室はそのまま保たれます。

結果として、浮力とチューブ自身の重さがほぼ同じ割合で減っていくため、「支えられる荷物の量」という意味での性能はほとんど変わりませんでした(誤差の範囲)。

最後に研究チームは超撥水アルミチューブをいくつも並べて接着して小さないかだに組み上げました。

内径がおよそ5ミリメートルのチューブを八本束ねたいかだは、自分自身の重さの約二・九倍もの金属の重りを水面で支え、さらに水中にしずめた状態でも、重り自体が水の中で少し浮くことも含めて、自重の約一・六倍の重さを支えたまま潜水艦のようにその場に静止させることもできました。

また、このいかだをコイルと磁石と組み合わせて水面に浮かべ、波で上下させることで、わずかではありますが電流を取り出す「波力発電」のデモも行われています。

中学で習う電磁誘導(磁石とコイルが近づいたり離れたりすると電気が生まれるしくみ)では、磁石が動くと電気が生まれます。

発電実験では、波に揺れるアルミいかだの動きで磁石が上下し、コイルを通る磁気の量が変わって電流が生まれたのです。

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