沈まない金属で何を作るか?
この研究の一番大きな意義は、「材料そのものを変えるのではなく、形と表面の工夫だけでまったく新しいふるまいを引き出した」という点にあります。
アルミニウムという、ごくありふれた金属は、本来は水より重くて沈むはずです。
それを、内側の超撥水加工と、筒の太さや仕切り板の入れ方といった“ジオメトリ(形の設計)”によって、「強くて、壊れても沈みにくい部品」に変えてしまったところに、この研究の面白さがあります。
潜水鐘グモやヒアリが、体の毛や凹凸を利用して空気を抱え込み、水中や洪水の中で生き延びるように、人間の技術でも「空気をどう味方につけるか」を設計の中心に据えた、ひとつの成功例と言えるでしょう。
また、エネルギーや防災という観点から見ても、この技術は大きな可能性を秘めています。
将来的に、洋上風力発電や海上太陽光パネル、波力発電などを大規模に広げていくには、海の上に多くの構造物を長期間浮かべておく必要があります。
そのとき、もし船体や土台の一部にこのような沈みにくいチューブが組み込まれていれば、何らかの理由で穴があいたり、部材の一部が壊れたりしても、すぐには沈まずにすむかもしれません。
もっとも現在の時点では「永遠に浮く金属ができた」と言い切るまでには至っていません。
金属表面の超撥水層は物理的なダメージによって剥がれることがありますし、経年劣化は現状では防ぎようがありません。
それでも、この研究は「生き物のまねをした表面」だけでなく、「幾何学的な設計(チューブの太さやしきりの位置)まで含めて、浮き構造を最適化する」という考え方を示してくれました。
これは、将来ほかの金属や複合材料にも応用できる可能性もあります。
例えば、鉄やマグネシウム合金など、別の材質のチューブに同じような超撥水内面をつくれば、より安価で大量生産しやすい「沈みにくい骨組み」ができるかもしれません。
また、チューブ同士を格子状に組み合わせたり、3次元的なフレームにしたりすることで、「軽くて強くて沈みにくい」新しい構造材として、橋脚や海上都市の基礎部分に使われる未来も考えられます。
もしかしたら未来の世界では、海の上に浮かぶ巨大な風車の足元や、波の力で発電するたくさんのブイ、さらには海上に広がる小さな町のような構造物の骨組みが、こうした「水に浮く金属」でできているかもしれません。

























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