手のひらサイズの浮遊する時空結晶が誕生
手のひらサイズの浮遊する時空結晶が誕生 / Credit:Scientists Discover “Levitating” Time Crystals that You Can Hold in Your Hand
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手のひらサイズの浮遊する時空結晶が誕生 (2/3)

2026.02.16 23:00:21 Monday

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作用≠反作用に見える世界から、手のひら時間結晶が生まれた

作用≠反作用に見える世界から、手のひら時間結晶が生まれた
作用≠反作用に見える世界から、手のひら時間結晶が生まれた / Credit:Scientists Discover “Levitating” Time Crystals that You Can Hold in Your Hand

本当に目に見えるサイズの時間結晶なんてつくれるのか?

研究チームはまずスピーカーから超音波(人には聞こえないくらい高い音)を出して、その音を空間の中で重ね合わせることで、山と谷が決まった場所に止まっている波を作りました。

この波の「谷」の部分では、空気の圧力のゆれが小さい節になっていて、小さな“空気のくぼみ”のような場所ができます。

発泡スチロールのビーズをそこに入れると、そのくぼみがビーズを四方から押さえつける形になり、ビーズは重力に逆らって空中でふわっと止まります。

こうして1個だけ浮かせることもできますが、研究ではこの「くぼみ」が並んだ場所に、少し大きさの違うビーズを2個並べて浮かせました。

浮かべた直後は、2個ともほとんど動かず、空中でじっとしているように見えます。

しかし現実には、空気のわずかなゆらぎや装置の微妙な振動のせいで、ビーズはごく小さく前後にゆれています。

ここからが本番です。

ビーズは周りの音の波をさえぎる「小さな壁」であり、同時に「小さな反射板」でもあります。

1個のビーズが音の波を散乱させると、その近くの“空気のくぼみ”の形が少し変わり、そのゆがみが、ビーズ自身を特定の方向へ押す力として働きます。

もう1個ビーズを置くと、お互いが散乱した音によって、相手のまわりの圧力分布を変えてしまいます。

その結果、「相手がいるせいで自分にかかる音の押す力が変わる」という、見えないバネでつながったような関係が生まれます。

ここでサイズの違いが効いてきます。

大きいビーズは、より多くの音を散乱させるため、相手の周りの圧力分布を強くゆがめます。

つまり「相手を強く押す」側になります。

一方、小さいビーズは散乱する音が少ないので、相手への影響は弱く、「押し返す力」は相対的に小さくなります。

ビーズ同士だけに注目すると、「押した力」と「押し返された力」がきっちり同じには見えず、わずかにアンバランスな押し合いが成立します。

水に浮かぶ大小の船でたとえると、2隻の船は、それぞれが起こした波で相手を押しますが、体の大きい船の方が波をたくさん作り、小さい船をより強く揺さぶってしまいます。

小さな船の起こす揺れも確かに存在しますが、大きな船を揺らす力は僅かです。

大きなほうが強く押せるのに、小さな方は強く押し返せないという状態です。

しかしこのアンバランスは、ニュートンの法則違反ではありません。

見えない役者として「音の波」がいて、そこが運動量を持ち去ったり持ってきたりしているからです。

ビーズ2個だけを切り取ると帳尻が合っていないように見えますが、「ビーズ+音の波」まで含めた全体では、行きと帰りのバランスはきちんと保たれています。

次に研究チームは、高速カメラでビーズの動きを長時間撮影し、その映像をコンピューターで解析することで、「最初は小さかったゆれが、少しずつ一定の大きさの振動へと育っていく」様子を確かめました。

もちろん、ビーズは空気の中を動いているので、動くたびに空気抵抗でエネルギーを失っています。

ところがこの実験では、ビーズの大きさの組み合わせや音の強さをうまく調整しているので、「音からもらう分」と「空気に奪われる分」がちょうど釣り合う条件を作ることができます。

そうなると、揺れの速さ(周波数)はある値「66ヘルツ前後」でピタッと落ち着き、その後は超音波は出し続けたまま、外からいじらなくても、同じリズムと同じ振幅の振動が少なくとも6700周期以上続きました。

このリズムは外部から「指定」されたわけではなく、音の波とビーズの大きさという自分たちだけの性質から生まれ、周期的に繰り返されます。

こうして、時間が経っても止まらない安定した振動=時間結晶を手に取るサイズに拡大した「古典的な時間結晶」が実現します。

理論解析では、この2粒子系が4種類の動的状態をとれることも示されています。

そのうち2つは外から一定のリズムで揺すらなくても動き続ける「活性定常状態(外部の波からエネルギーを取り出して続く状態)」であり、その1つが今回観測された連続古典時間結晶です。

研究者たちは、時間結晶モードでは空間と時間の対称性(いつ・どこを見ても同じという性質)が自発的に壊れ、系が安定した“周回軌道”に乗っていること、さらにその裏側に「パリティ時間対称性(PT対称性)」の破れと「例外点」が潜んでいることも示しました。

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