なぜ赤血球は糖を欲しがるのか?細胞の中で起きる巧妙な戦略
酸素を運ぶのが専門であるはずの赤血球が、なぜこれほどまでに糖を必要とするのでしょうか。
そこには、酸素が少ない過酷な環境で生き抜くための、非常に合理的な理由が隠されています。
酸素が薄い場所では、赤血球は肺で取り込んだわずかな酸素を、体の隅々の組織へより効率よく「手放す」必要があります。
この酸素を手放す働きを助けるのが、「2,3-DPG(2,3-ジホスホグリセリン酸)」という物質です。
赤血球はこの助っ人となる物質を増産するために、材料となる糖を外から大量に取り込むようになります。
研究チームが詳しく調べると、低酸素環境で新しく作られた「若い赤血球」には、糖を取り込むための玄関口である「グルコーストランスポーター1(GLUT1:糖輸送体1)」というタンパク質が通常より多く備わっていることが分かりました。
いわば、糖を効率よく吸い込むための専用の窓口を増設し、血液中の糖をどんどん細胞内へと回収していたのです。
さらに、赤血球の内部でも驚くべき変化が起きていました。
通常、赤血球の中で糖を分解する酵素は、細胞の膜に張り付いて「スリープ状態」になっています。
しかし、酸素が少なくなると、この酵素が膜から離れて細胞の中を自由に動き回り、ラポポート-リューベリング・シャント(Luebering–Rapoport shunt:赤血球に特有の解糖系の迂回路)へ糖の流れを回して、2,3-DPGを作るプロセスを加速させることが突き止められました。
この仕組みはマウスだけでなく人間の赤血球でも共通して見られる反応です。
この発見は、将来の糖尿病治療に全く新しい道を開くかもしれません。
実際に糖尿病のマウスに、低酸素状態を疑似的に作り出す化合物(HypoxyStat:ハイポキシスタット)を経口投与したところ、血糖値が劇的に改善することが確認されています。
もちろん、単純に赤血球を増やしすぎると血液がドロドロになる(粘性が高まる)というリスクも考えられます。
そのため今後は、赤血球の数そのものを増やすのではなく、赤血球が持つ「糖を吸い取る能力」だけを安全に引き出すような、新しい治療法の開発が期待されています。



























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