血の滝は氷河下の圧力変化を示すサインだった
今回の研究から見えてきたのは、血の滝が単なる表面の不思議な現象ではないということです。
むしろ、氷河の下で起きている塩水の動きと圧力変化が、地表に現れたサインだと考えられます。
テイラー氷河の下には、非常に塩分の高い塩水がたまっており、それが地下の通り道を通って移動していると考えられています。
氷河は非常に重いため、その下にある塩水には強い圧力がかかります。
氷河がゆっくりと前進するにつれて圧力が高まると、地下の通り道が一時的に開き、塩水が外へ流れ出すことがあります。
血の滝は、その放出が地表に現れた現象だと解釈できます。
このとき氷河そのものにも変化が起きます。
塩水が外へ出ると、氷河の下でそれまで働いていた水圧が弱くなります。
すると、下から支えられる力が少し弱まり、氷河の表面がわずかに沈みます。
今回記録された約15ミリの沈下は、その変化をとらえたものと考えられます。
さらに、氷河の底にある水は、氷河が滑るのを助ける役割も持っています。
底に水があると摩擦が減って滑りやすくなりますが、水が減ると摩擦が増え、氷河の動きは遅くなります。
実際、今回の観測では氷河の速度がそれまでよりも遅くなっていました。
これも、地下の塩水が抜けたこととつながっていると考えられます。
また、湖の深い場所で水温が下がったことも重要です。
研究者らは、この変化が地下の塩水の流入と対応していると考えています。
つまり、血の滝として表面に出てきた分だけでなく、氷河の前の湖にも塩水が流れ込んでいた可能性が高いのです。
こうして見ると、血の滝は氷河だけの現象ではなく、周囲の湖の環境ともつながった出来事だと分かります。
この研究の意義は、極寒の南極でも、氷河の下に動く液体と圧力変化の仕組みがあることを、複数の観測でそろって示した点にあります。
論文でも、今回の同期した記録は、氷河下の塩水排出イベントをとらえた珍しい証拠だと位置づけられています。
ただし、観測は主に2018年の1回の出来事を中心としており、こうした放出がどれくらいの頻度で起きるのかまではまだ分かっていません。
今後は、より多くの地点で長期的な観測を続ける必要があります。





























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