物質世界はブラックホールの衝撃波のお陰なのか?

今回の2つの研究により、原始ブラックホールの最期は単なる「静かな消滅」ではなく、初期宇宙の超高温・超高密度の粒子を激しく揺さぶる現象であり、その過程が物質と反物質のわずかな不均衡を生み出す舞台になりえた可能性が示されました。
これまで原始ブラックホールの蒸発は、周囲に熱が広がっていく比較的おだやかな現象として扱われることが多くありましたが、今回の研究はその見方を大きく変えました。
原始ブラックホールが最後に放つエネルギーは、周囲の粒子に急激な圧力差を生み、電磁気力と弱い力の分かれ方を局所的に巻き戻すような状態(電弱対称性の局所回復)に戻す可能性があることが示されたのです。
さらに重要なのは、その衝撃波の内部で起きる物理です。
この動く境界が特定の条件で粒子と反粒子にわずかな偏りを与え、その偏りが高温領域の中で物質の数の差へと変換される可能性があります。
しかもその高温の殻は長くとどまらず、すばやく宇宙の中を通り過ぎていくため、差が残りやすくなるという仕組みも示されました。
もちろん、この仕組みが実際にどれほどの物質の偏りを生み出せるのかについては、まだ検証が必要です。
論文でも、具体的な生成量や条件については今後の研究に委ねられています。
ただこの考え方の面白いところは、物質と反物質の非対称という大問題を、「未知の粒子」だけでなく、「初期宇宙の流体の動き」という観点から説明しようとしている点にあります。
宇宙の中を走る衝撃波という、一見マクロな現象が、素粒子レベルの数の偏りに影響を与えるかもしれないというのは、スケールの違いをまたいだ発想です。
私たちはよく、「人間は星くずでできている」と言いますが、今回の研究の視点から視れば、「人間はブラックホールの衝撃波でうまれた」とも言い換えられるでしょう。
星くずがそもそも残るためには、もっと前の段階で、物質が反物質にほんの少し勝たなくてはならないからです。
そう考えると、私たちの存在は、星の死だけでなく、宇宙誕生直後のブラックホールの死にも、少しだけ借りがあると言えるでしょう。




























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