闇は光より速い――光速を超え無限大へ向かう「特異点」を発見
闇は光より速い――光速を超え無限大へ向かう「特異点」を発見 / Credit: Technion – Israel Institute of Technology
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闇は光より速い――光速を超え無限大へ向かう「特異点」を発見 (3/5)

2026.05.05 20:30:37 Tuesday

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ペアで生まれて、ペアで死ぬ――特異点の掟

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暗闇の点の速度分布(赤い線)と、比較対象である粒子の速度分布(黒い点線)。横軸は速度(光速cで割った値)、縦軸は確率密度。黄色く塗られた領域が「光速を超えた領域」で、暗闇の点の分布は、ここまで明確に裾を伸ばしている──全体の29%がこの領域に入る。一方、粒子の分布はこの領域にほぼ届かない。「暗闇の点は粒子のように見えるが、速度だけは粒子の真似をしない」という、論文の核心を一目で示すグラフ。/Credit: Bucher et al., Nature (2026)

先に述べたように、今回の観測の舞台となった薄い窒化ホウ素の結晶です。

研究者たちはここにを当てます。

すると位相特異点と呼ばれる闇が複数出現します。

そこで研究者たちは、追跡のための観測装置を組み上げ、髪の毛の太さの約3分の1ほどの極小の視野の中で、約50個の暗闇の点を同時に追跡することに成功しました。

この観測装置の性能は凄まじく、3フェムト秒(1秒の300兆分の1)刻みの精度で、暗点の動きを捉えられます。

3フェムト秒というのが、どれぐらいの短さかというと、真空中の光ですら、その間にわずか0.9マイクロメートル(人間の細胞より小さい距離)しか進めないぐらいの一瞬です。

このとき、闇はどのくらい動いていたのでしょうか?

すると意外な姿が見えてきました。

闇の点たちは暗闇の点には「右巻き、左巻き」の2種類があったのです。

身近なたとえで言うと、頭頂部のつむじ。つむじには右巻きと左巻きがありますよね。あれと同じだと思ってください。

ただ現れ方に奇妙な特徴がありました。

空間の極めて近い2か所に、新しく『振幅ゼロの点』が同時にひょっこり現れると、その2つの点のうち、片方が右巻きの中心、もう片方が左巻きの中心として生まれる――という感じです。

さらに右巻きと左巻きの特異点(闇の点)たちは、基本的に同じ数だけ生まれて、同じ数だけ消えていくということを繰り返していました。

何もない状態から渦が生まれるなら、合計の「巻き」がゼロのままでなければならない――私たちの宇宙にはそういう保存則があります。

そして空間がなめらかに繋がり、波が波として連続的に存在するこの宇宙では、この法則は破られないようになっているのです。

右巻きだけ、左巻きだけが安定して増えるわけではなく、通常は全体の巻きのつじつまが保たれるように現れるのです。

ここに「なぜ?」という疑問が浮かぶかもしれません。

実はこの先は、物理学が答えを持たない領域です。

渦は逆向きペアでしか生まれない

↓  なぜ?

連続性が保たれなければならないから

↓  なぜ?

波がなめらかに存在できなくなるから

↓  なぜ?

宇宙の物理法則がそうなっているから

↓  なぜ?

こめんなさい、わかりません

「波が連続的に存在する宇宙だから、こういう法則が成り立つ」と説明することはできても、「なぜ、波が連続的に存在する宇宙なのか」を問うと、物理学はそこで沈黙してしまうのです。

ファインマンが「磁石が反発するのはなぜですかと聞かれても、それより深い説明はないんです」と言ったように、宇宙の法則は最終的にどこかで「そういうものなんだ」という地点にたどり着きます。

本論文の特異点が従う掟も、その最も深い場所に近いところに根を持っているのです。

さて物理法則の深淵を覗いたところでいよいよ本題です。

次ページ闇のが光の速度を超え無限大になる瞬間

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