ペアで生まれて、ペアで死ぬ――特異点の掟

先に述べたように、今回の観測の舞台となった薄い窒化ホウ素の結晶です。
研究者たちはここに光を当てます。
すると位相特異点と呼ばれる闇が複数出現します。
そこで研究者たちは、追跡のための観測装置を組み上げ、髪の毛の太さの約3分の1ほどの極小の視野の中で、約50個の暗闇の点を同時に追跡することに成功しました。
この観測装置の性能は凄まじく、3フェムト秒(1秒の300兆分の1)刻みの精度で、暗点の動きを捉えられます。
3フェムト秒というのが、どれぐらいの短さかというと、真空中の光ですら、その間にわずか0.9マイクロメートル(人間の細胞より小さい距離)しか進めないぐらいの一瞬です。
このとき、闇はどのくらい動いていたのでしょうか?
すると意外な姿が見えてきました。
闇の点たちは暗闇の点には「右巻き、左巻き」の2種類があったのです。
身近なたとえで言うと、頭頂部のつむじ。つむじには右巻きと左巻きがありますよね。あれと同じだと思ってください。
ただ現れ方に奇妙な特徴がありました。
空間の極めて近い2か所に、新しく『振幅ゼロの点』が同時にひょっこり現れると、その2つの点のうち、片方が右巻きの中心、もう片方が左巻きの中心として生まれる――という感じです。
さらに右巻きと左巻きの特異点(闇の点)たちは、基本的に同じ数だけ生まれて、同じ数だけ消えていくということを繰り返していました。
何もない状態から渦が生まれるなら、合計の「巻き」がゼロのままでなければならない――私たちの宇宙にはそういう保存則があります。
そして空間がなめらかに繋がり、波が波として連続的に存在するこの宇宙では、この法則は破られないようになっているのです。
右巻きだけ、左巻きだけが安定して増えるわけではなく、通常は全体の巻きのつじつまが保たれるように現れるのです。
ここに「なぜ?」という疑問が浮かぶかもしれません。
実はこの先は、物理学が答えを持たない領域です。
渦は逆向きペアでしか生まれない
↓ なぜ?
連続性が保たれなければならないから
↓ なぜ?
波がなめらかに存在できなくなるから
↓ なぜ?
宇宙の物理法則がそうなっているから
↓ なぜ?
こめんなさい、わかりません
「波が連続的に存在する宇宙だから、こういう法則が成り立つ」と説明することはできても、「なぜ、波が連続的に存在する宇宙なのか」を問うと、物理学はそこで沈黙してしまうのです。
ファインマンが「磁石が反発するのはなぜですかと聞かれても、それより深い説明はないんです」と言ったように、宇宙の法則は最終的にどこかで「そういうものなんだ」という地点にたどり着きます。
本論文の特異点が従う掟も、その最も深い場所に近いところに根を持っているのです。
さて物理法則の深淵を覗いたところでいよいよ本題です。



























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