物質と反物質のペアに起きた、奇妙な一体化

「電子1個と陽電子1個のペア(ポジトロニウム)」を「波として観測する」と一言で言うのは簡単ですが、実験的にはハードルの高い試みです。
まず最大の壁は、ポジトロニウムが電気的に中性であることです。
電子なら電場をかければ加速でき、スリットなりグラフェンなりに向かわせることができます。
しかし電荷がないものは、電場では加速できません。
二重スリットなり結晶なりを先に用意していても、発射できなければ実験は成り立ちません。
そこで研究チームは離れ業を使いました。
ポジトロニウムにもうひとつ電子をくっつけて、全体としてマイナスの電荷を持たせるのです。
マイナスにしてしまえば電場で加速できます。
ただこのままでは観測対象にしたい「電子1個と陽電子1個のペア(ポジトロニウム)」ではありません。
そこで加速し終わったところでレーザーを当てて、余分な電子だけをきれいに剥がすことにしました。
ビームの標的には、炭素原子が規則正しく並んだ極薄のシート「グラフェン」を使いました。
波がこうした規則的な構造を通り抜けると、特定の方向に強め合うパターンが現れます。
原理は二重スリット実験と同じ量子干渉です。
ただし、ここからが本番の苦行でした。

検出器に届くポジトロニウムは1秒にわずか0.01〜0.02個。
コーヒーを1杯飲んでいる間に、ようやく1個届くペースです。
しかも装置のメンテナンスも過酷でした。
グラフェン表面は数時間ごとにレーザーで汚れを焼く必要があり、レーザー系自体は一晩冷ます必要があり、陽電子を扱いやすい速度に整える装置(モデレーター)も数日ごとに再生が必要──。
こうした作業の合間を縫って観測を続け、エネルギー3.3 keVのビームで210時間、2.3 keVで370時間。
のべ約2年の歳月が費やされました。
そしてついに、膨大なデータの中から小さなピークが浮かび上がりました。
肝心なのは、検出器のビーム中心からどれくらい離れたリング上にピークが強く出ているか、です。
ポジトロニウムビームがグラフェンを通り抜けると、回折信号はビーム軸を取り囲むようなリング状の分布として現れます。
この輪の半径こそが、本研究のすべてを決定づけました。
物質が波として振る舞うとき、質量が重いほど波長は短くなります。
そして波長が短ければ、強め合う輪は中心に近い位置に現れます(逆に波長が長ければ外側に膨らみます)。
もしペアが「ひとつの粒子」として波打つ場合、輪の半径は8.1ミリ。
しかし電子と陽電子がバラバラの粒子として波打っていた場合、輪の半径は倍の16.2ミリに膨らみます。
3.3 keVのビームで観測されたピークの位置は、実測値8.4ミリ。「8.1ミリ」の予測におおむね一致しました。
一方、16.2ミリには目立つピークは見られませんでした。
念のため、ポジトロニウムビームを発射するエネルギーを最初の3.3 keVから2.3 keVに落として、もう一度測定しました。
エネルギーを変えても予測通りの振る舞いが再現されるか、念入りに確かめるためです。
このときの理論予測は、輪の半径が9.7ミリ。
3.3 keVのときの8.1ミリより、少し外側に押し広げられた値です。
そして観測されたピークは10.0ミリ。
誤差の範囲内で一致しました。
エネルギーを変えても、やはり「ペア全体としてひとつの波」として振る舞うという予測が、きれいに再現されたのです。




























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