抗うつ薬に近い改善も、まだ人間には使えない
チームは、うつ病様状態を誘導したマウスに、このスマートコンタクトレンズを装着。
刺激は1日30分、3週間にわたって行われました。
そして、
・治療を受けないマウス
・抗うつ薬フルオキセチンを投与されたマウス
・コンタクトレンズ刺激を受けたマウス
を比較しました。
その結果、コンタクトレンズ刺激を受けたマウスでは、うつ病様行動の改善が確認されました。
しかもその改善は、抗うつ薬を投与された群と同程度だったと報告されています。
脳活動の面でも、うつ病様状態で弱まっていた海馬と前頭前皮質の結びつきが回復したとされています。
海馬は記憶や感情に関わる領域で、前頭前皮質は判断や感情制御に関わる領域です。
さらに、未治療のうつ病様マウスと比べて、血中コルチコステロンは48%低下し、セロトニン濃度は47%増加したと報告されています。
コルチコステロンはマウスなどでストレス反応に関わるホルモンで、セロトニンは気分調節と関係の深い神経伝達物質です。
またチームは、行動、脳活動、バイオマーカーを機械学習で解析しました。
その結果、コンタクトレンズ刺激を受けたマウスの特徴は、未治療のうつ病様マウスよりも健康な対照群に近いと分類されました。
ただし、ここで重要なのは、これはあくまでマウス研究だという点です。
人間のうつ病は、症状も原因も重症度も人によって大きく異なります。
実験室で誘導されたマウスのうつ病様行動を、人間のうつ病とそのまま同じものとして扱うことはできません。
また今回の方法は、正常な視覚活動が電気信号の伝達を妨げないよう、視覚が損なわれたマウスで試されています。
そのため、健康な網膜を持つ動物や人間にそのまま使える技術ではまだありません。
さらに、人間の目は焦点調節のために水晶体の形を変えます。
こうした動きが、角膜上のコンタクトレンズから送る信号を乱す可能性もあります。
安全性、装着性、感染リスク、長期使用時の影響、製造コストなど、実用化には多くの課題が残されています。
それでも今回の研究は、目を通じて脳に働きかけるという新しい治療戦略の可能性を示した点で注目されます。
うつ病治療の未来は、薬だけでも、脳に直接機器を埋め込む方法だけでもないのかもしれません。






















































