ヒマラヤ山脈で「笑顔のクモ」が見つかる
今回の発見は、最初から「笑顔のクモ」を探す調査で見つかったものではありません。
もともと研究チームは、ヒマラヤ地域の生物を調べる調査を行っており、主な対象はアリでした。
しかし調査中、インド森林研究所の Ashirwad Tripathy 氏が高地で見つけたクモの写真を、地域自然史博物館の Devi Priyadarshini 氏に送りました。
その写真には、葉の裏側にいた小さなクモが写っていました。
Priyadarshini 氏は、その腹部の模様を見て驚いたといいます。
というのも、その姿がハワイで有名な「ハッピーフェイス・スパイダー」によく似ていたからです。
ハワイのハッピーフェイス・スパイダーは、和名では「ニコヤカヒメグモ」とも呼ばれており、腹部に笑顔のような模様を持つことで知られています。
正式には Theridion grallator という種で、赤や黒、白の模様が組み合わさり、個体によってさまざまな顔のようなパターンが現れます。
このように、同じ種の中で複数の模様が見られる性質は「多型」と呼ばれます。

今回ヒマラヤで見つかったクモも、腹部に似たような模様の多様性を持っていたため、研究者たちは本格的な調査を始めました。
調査は2023年から2024年にかけて、ウッタラーカンド州の3地域で行われました。
研究チームは、葉を叩いて落ちてきた生物を採集する方法、草を網で払う方法、直接捕獲などを組み合わせてクモを集め、顕微鏡で体の形や雌雄の生殖器の構造が詳しく調べられました。
さらに、脚からDNAを抽出し、特定の遺伝子領域を比較する解析も行われました。
その結果、見た目の模様だけでなく、体の細かな構造や遺伝的な違いからも、既知の種とは異なる新種だと判断されました。
新種名 Theridion himalayana は、発見地であるヒマラヤ山脈に敬意を込めたものです。
では、この新種はどのような特徴を持ち、ハワイのクモとは何が違うのでしょうか。
32種類もの模様を持つヒマラヤの新種
新たに記載された Theridion himalayana は、体長およそ2〜3ミリほどの小さなクモです。
体は淡い黄色から黄緑色を帯びており、特に目を引くのは腹部の模様です。
赤い斑点や白い輪、黒い点が組み合わさることで、人間には「笑顔」のように見える個体があります。
しかし、その模様はすべて同じではありません。
研究チームは61個体を調べ、32種類もの色彩型を確認しました。
模様は、赤い斑点の周囲に白い輪を持つタイプ、黒い輪を持つタイプ、環状の模様を持つタイプ、比較的模様の少ないタイプなどに分けられています。

また、オスとメスで模様の傾向が異なる点も注目されました。
メスでは赤い斑点と白い輪を持つ目立つタイプが多く、オスでは比較的模様の少ないタイプが多く見られました。
ただし、この違いがどのような意味を持つのかは、まだはっきり分かっていません。
そして、このクモは主に植物の葉裏で見つかりました。
巣は大きく目立つものではなく、葉の裏面に沿って細い糸を張る簡素な構造です。
獲物としては、ハエ類やガガンボ類が確認されています。
DNA解析では、ヒマラヤの新種とハワイのニコヤカヒメグモの間に、約8.5%の遺伝的差異が確認されました。
見た目はよく似ていますが、同じ種ではないと考えられます。
つまりハワイの有名なクモに似た“笑顔模様”を持つ、まったく別の新種がインドで見つかったのです。
もしかしたら世界には、まだ知られていない”さらに別の笑顔”も存在しているかもしれません。





















どうせあんまり笑顔っぽく見えないんだろうなとは想像してたけどかなり大きく下回ってきたな
笑顔なんて点二つと曲線一本あればいいのにここまで笑顔に見えないのも珍しい