猫の毛づくろいは相手への「圧」にもなる

分析を行うと、直感と整合する行動パターンが得られました。
猫同士の毛づくろいは、一枚岩の行為ではなく、そこには少なくとも二つの、対照的な文脈につながる行動パターンがありました。
一つは、従来の定説どおり、毛づくろいが友情や親密さの表れとして行われているケースです。
そしてこのとき、姿勢や行動にも友好的な関係を示す特徴もありました。
毛づくろいの前後で、猫同士が身体をぴったりくっつけ合って寄り添っていること。
そして、二匹が同じポーズをとっていること——ともに寝そべっている、ともに座っているといった具合です。
こうした「姿勢の一致」が見られるペアほど、身体を密着させている時間が長いことが統計的にも確認されました。
これは人間でも起こる現象です。
たとえば、カフェで向かい合った仲の良い友人同士が、無意識のうちに同じ姿勢で頬杖をついている。
あの自然な同調と似たことが、猫の間にも起きているのです。
さらに、毛づくろいの後にじゃれ合い(レスリング)へとつながる流れも見られました。
毛づくろいが「遊ぼうよ」という誘いとして機能している場面もあったのです。
ところが、もう一つの文脈はまるで違いました。
猫同士の間に静かな対立や気まずさがあるとき、同じ毛づくろいでも、姿勢や行動にはまったく別のパターンが現れたのです。
注目すべきは姿勢の「ズレ」です。
片方の猫が立ってもう片方を見下ろすように舐めている。
あるいは、一匹が相手に覆いかぶさるような体勢になっている。
こうした非対称な姿勢は、二匹の間に何らかの緊張があることを示唆しています。
また舐められた側は、耳を後ろや横に向ける動きを見せました。
これは不快や苛立ち、恐れの手がかりになり得ます。
他にも猫たちには「舌なめずり、あくび、頭をぶるっと振る、自分をかく」など、緊張したときについ出てしまうクセのような動作が見られました。
さらには、こうした緊張をはらんだやり取りの中で、前脚で相手を叩いたり(いわゆる猫パンチ)、軽く噛みついたりする場面も観察されました。
研究チームは、猫が日当たりの良い昼寝スポットのような「お気に入りの場所」をめぐって、相手を舐めることでまるで「ここは自分の場所だ」と伝えるように働いている可能性があると示唆しています。
つまり、穏やかな交渉の手段あるいは「圧」として機能していた可能性があるわけです。




























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