汚染された下流で2種が交雑集団へ変化
特に大きな変化が見つかったのは、カルナリという町を通る河川です。
町の上流では、2種は同じ場所に生息していても、遺伝的には別々の集団として保たれていました。
ところが下流では、両種の遺伝的特徴をさまざまな割合で持つ魚が多数現れ、集団全体が連続的に混ざり合っていました。
そして下流の水は上流より濁り、硝酸塩やリン酸塩に加え、銅、鉛、カドミウムなどの濃度も高くなっていました。
また下流のメスでは、においを感知する嗅繊毛の欠損と、粘液を作る細胞の増加も確認されました。
研究者たちは、「ある意味で、人間が風邪で鼻づまりになったような状態だ」とたとえています。
さらに母親と胚の遺伝情報を比較すると、下流では自分と近い遺伝的背景の相手を選ぶ「同類交配」が上流より弱くなっていました。
このため研究チームは、水中の化学物質が嗅覚による相手の識別を乱し、異種との交配を増やした可能性を考えています。
ただし、汚染から嗅覚障害、配偶者選びの変化、交雑増加までの因果関係が、一連の実験で直接証明されたわけではありません。
今回示されたのは、水質変化と嗅覚組織の損傷、同類交配の弱まり、交雑集団の形成が同じ下流域で重なっていたという、強い状況証拠です。
そして、もともとの2種が1つの交雑集団に溶け合う「種の崩壊」が懸念されています。
こうした変化は、種の独自性そのものを失わせる可能性があります。
人間の活動は魚の命だけでなく、種の境界という見えにくい仕組みまで侵食しているのかもしれません


































