尾の付け根に残された「オスの証拠」
今回の研究で最も重要なのが、小さい方の標本に見られた尾の付け根の膨らみです。
トカゲやヘビを含む有鱗類のオスは、「半陰茎(はんいんけい)」と呼ばれる左右一対の交尾器官を持っています。
通常、半陰茎は体外に出たままではなく、総排出腔の後方にある尾の内部へ収納されています。
そのため、現生のオスでは尾の付け根が膨らんで見える場合があります。
チームは現生の小型ヤモリのオスとメスを比較し、化石に残された膨らみが、オスの半陰茎によって生じる形とよく似ていることを確認しました。
ただし、半陰茎そのものが琥珀の中に残っているわけではありません。
あくまで尾の外形に残された膨らみから、そこに一対の交尾器官が収納されていたと解釈したものです。
骨や歯と違い、このような柔らかな組織の痕跡は、通常の岩石化石にはほとんど残りません。

今回の発見は、中期白亜紀の有鱗(ゆうりん)類がすでに半陰茎を持っていたことを示す、非常に珍しい証拠となります。
ただし、半陰茎が9900万年前に誕生したという意味ではありません。
研究者たちは、有鱗類が現れた三畳紀か、それ以前の祖先の段階ですでに成立していた可能性が高いと考えています。
また、この新種の足には、壁や木に張り付く現生ヤモリに見られる粘着性の指先がありませんでした。
爪も強く曲がっていないため、木の上よりも地面を中心に暮らしていた可能性があります。
ただし、これは足の形から推測されたものであり、実際の行動が直接確認されたわけではありません。
今回の琥珀は、小さな動物の姿だけでなく、通常なら失われてしまう性別の手がかりまで約9900万年間保存していました。
新種ヤモリの系統的位置や成体の姿には、まだ分からない点が残されています。
それでも、わずか数センチの体に残された尾の膨らみは、恐竜時代のヤモリ類がどのように繁殖していたのかを知る、貴重な窓になったのです。





























