最初の成績が低い子どもほど「伸びた」ように見えていた
研究1では、高過信群のほうが、低過信群よりも課題を通じた成績の低下が小さくなっていました。
しかし詳しく調べると、高過信群は最初の記憶成績が低く、後半の成績では2群に明確な差がありませんでした。
つまり、高過信群が優れた成績へ伸びたのではなく、最初の成績だけが低かったため、その後の変化が良く見えていたのです。
この偏りは、子どもを2つの群に分ける方法によって生じました。
研究では、「覚えられると予想した数」から「最初に実際に思い出せた数」を引き、その差が大きい子どもを高過信群に分類していました。
そのため、同じ10個を覚えられると予想した場合でも、実際に4個しか思い出せなかった子どもは、8個思い出せた子どもより過信の程度が高いと判定されます。
つまり、最初の成績が低い子どもほど、高過信群に入りやすい仕組みになっていたのです。
さらに、ここへ「平均への回帰」と呼ばれる現象が加わります。
テストの成績には、本人の能力だけでなく、その日の集中力や偶然の揺れも影響します。
そのため、最初にたまたま極端に低い成績を取った人は、次の測定では普段に近い成績へ戻り、成績が上がったように見えやすくなります。
反対に、最初に偶然よい成績を取った人は、次には成績が下がったように見えやすくなります。
今回の方法では、最初の成績が低い子どもを高過信群へ集めたうえで、その同じ成績を基準に後の変化を測っていました。
その結果、自信過剰に本当の効果がなくても、高過信群のほうが改善したり、成績の低下が小さかったりするように見えたのです。
研究2でも、自信過剰に学習効果がないと仮定したモデルを従来の方法で分析すると、同じ見かけ上の優位が現れました。
さらに研究3では、偽の評価によって子どもの自信を変えることには成功しましたが、実際の記憶成績の変化には差がありませんでした。
それにもかかわらず、子どもたちを従来の方法で分類し直すと、自信過剰が有利に見える結果が再び現れました。
このことから研究チームは、過去に報告された学習上の優位は、自信過剰の本当の効果ではなく、分析方法によって生じたものだと結論づけています。
ただし研究チームは、「子どもを励ましても意味がない」「楽観的であっても無意味だ」と言っているわけではないことを強調しています。
ちなみに、この研究には限界もあります。
対象は6~8歳の子どもによる短期的な記憶課題であり、長期的な学校成績や挑戦する意欲、運動や創造的な活動への影響までは分かりません。
今後は、異なる年齢や課題、より長い期間を対象に、自信が行動や学習へ与える影響を確かめる必要があります。
今回示されたのは、能力を実際以上に高く思わせるだけでは、記憶成績の向上にはつながらなかったということです。
子どもを励ますときには、能力を誇張するのではなく、本人の努力や工夫、実際の進歩に目を向けることが大切でしょう。































