人がいると活動性が約2倍に
比較すると、興味深い違いが現れました。
人がいる時間が長い「More People」の条件では、カワウソが泳ぐ、歩く、登るなどの活動的な行動が観察された割合は39.59%でした。
一方、「Less People」の条件では16.36%にとどまり、この差は統計的にも有意でした。
つまり今回観察されたカワウソたちは、人が周囲にいるときほど隠れてじっとするどころか、むしろ活発に動き、人から見える場所にいる傾向を示したのです。
さらに、人が確認された観察時点が多いほど、カワウソが鳴き声を発する割合もわずかに高くなる関係が見られました。
コツメカワウソはもともと非常に社会的で、さまざまな鳴き声を使う動物です。
ただし今回の研究では「鳴いたかどうか」しか記録しておらず、その声が興奮や期待を表していたのか、それとも警戒やストレスを表していたのかまでは分かりません。
また、来園者だけがいる場合とスタッフもいる場合を比べても、鳴き声には明確な違いがありませんでした。
では、カワウソにとって来園者は一種の「娯楽」なのでしょうか。
研究者らは、人間の存在がカワウソにとって刺激となり、環境エンリッチメントのような効果を持つ可能性を指摘しています。

しかし、この研究だけでそこまで断定することはできません。
なぜなら、人が来たからカワウソが活動的になったのではなく、活発に泳ぎ回るカワウソを見て来園者が集まってきただけかもしれないからです。
今回の研究は観察研究なので、この2つを区別できません。
さらに対象は1つの動物園に暮らす6頭だけで、観察者間で行動の判定が一致しているかを検証する観察者間信頼性も測定されていません。
給餌時間や天候など、別の要因がカワウソの活動性に影響した可能性も残されています。
それでも今回の結果は、「動物園の動物にとって人間は迷惑な存在」という単純なイメージに一石を投じています。
私たちが「カワウソを見に行く」と思って動物園を訪れているそのとき、カワウソの側もまた、こちらを興味深い刺激として受け止めている可能性があります。
ガラスのこちら側と向こう側で、本当はお互いに相手を観察しているのかもしれません。
































